GAIAの副長をつとめる俺には別のマークが入っているからだ。
黒の車体に巻き付くかのような蛇の柄。
前を見据えるその蛇眼は金と朱のオッドアイになっており、常に鋭い眼光をたたえている。
言うとかなりド派手に聞こえるだろうが、実際黒地に濃い灰色で描かれた蛇は走っていればまったく見えない代物だ。
「三臣もう手入れは終わるの?」
バイクに柄を入れるってのは、俺にとっては入れ墨のようなもの。
見た目の問題じゃなくってある種の誓いみたいな、大事なもんだ。
「はい、後は片付けを少ししたら」
本当はもう少ししたかったが、元様そっちのけでバイクを弄れるわけもないしな。
俺はバイクの蛇に目をやり、心の中で謝る。
ごめんな、不機嫌になるなよって。
「そう?じゃあ上がって待ってるねー!」
「はい、すぐ参ります」
無邪気な笑顔を振り撒きながらウチへ入っていく元様に手を振り返す。
あんなに可愛らしい人がこの広い北区の頂点に君臨しているんだ。
俺がしっかりしていなくちゃ、な。
今はチームだって大事な時期なんだから。
こんな時に元様との関係を気まずいものにしたくはない。
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