ボロ雑巾がオイルで真っ黒に染まっていく。
いつもなら好きなバイク弄りも今日はまったくはかどらない、な。
原因は最近恋人になった愛しい人、元様の事。
「はぁ…」
バケツに投げ込んだ雑巾が水しぶきを辺りに撒き散らす。
なんだかな。
あれ以降、元様とは順調に『お付き合い』しているが…夜の付き合いはもちろんない。
「今日は集会だし、早めに切り上げるか」
俺が言った事に嘘は一つもないんです。
ないんです、が。
「身体、か」
本当の事を言って嫌われるのが怖かったんです。
俺は……
「三臣ー!」
「ー…っ、元様!」
「ちょっと早く来過ぎちゃって!集会8時からだからまだ時間あるんだけどぉーーぉ?バイクの手入れしてたの?」
「はい、元様のも洗いましょうか…っと、もうピカピカですね」
「おー!」
うちのバイク置場に不釣り合いなそのバイクは元様の愛車。
側面にはGAIAと描いてあるが、元様の手書き、と言うと語弊があるか?
元様のデザインを業者がバイクにいれてくれたのだ。
うちのチームマークにもなっているので、他のメンバーも同じマークをつけている。
まぁ、大きさは比べものにならないが、な。
ちなみに俺のバイクにこのマークはない。
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