「お前何してんだよ!!」
「え?大丈夫よぉ!!ちゃぁんともえちゃんに送っといたからぁん」
「この野郎!!ケータイ貸しやがれ!!!!」
「あはん☆カズってば忘れんぼサン」
………へ?
将之を突き飛ばして、俺の手はユエを掴むはずだった。
そう、普通だったら。
「カズマサッ!!」
俺は限界まで引っ張られた足枷に足を取られ、ぶざまに転んだのだ。
「アッハッハ!!笑わせないでよぉ!!アンタどこのお笑い芸人かっての!!」
ユエは軽やかに手摺りから飛び降りると、俺を踏み付けたまま足枷を外しやがった。
そのままブンブン足枷を回してはケタケタ笑っていたが途中で飽きたのだろう、ドアの中へと消えていった…イヤ、いいけどさ。
将之も俺もユエ+足枷という組み合わせを前に恐怖におののいていたのは言うまでもない。
怖いっつーか本能が関わるなっていうんだよね。
「……なぁ、なんでお前あんなのしてたんだ」
「聞カナイデ下サイ」
そっとしといて下さい。
人間いろいろあるんで…
「わ、悪かった」
いまだ地べたにいる俺に将之は手を差し延べる。
今は、まだ。
この手が俺だけのものってだけで満足しようか、な。
帰ろう、将之。
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