それは奇妙な感覚だった。

「ユエ、どうかした?」

「……大丈夫よ」

暗闇に紛れて私達は、兎に教えられた場所へ来ていた。

月夜を浮かすこゆい黒、地を静かに揺するバイクの振動、そして仲間の声。
いつもと変わらない風景なのにまるで違う気がした。

主が、いない。
ただそれだけで…。

「炎、アンタは萌ちゃんと離れてて不安になることはあるの?」

「…、…ユエは、不安?」

どうかしら。
主がいない場所に私の居場所はナイ。
居場所がないのに存在するこの奇妙な違和感。

地に
足が着かないような…

「あぁ、人はこれを不安と呼ぶのかもしれないわね」

「……ユエ、俺は…」

「おー!いたいた!鈴遅れてワリィネ!!」

もう!
空気が読めない男ね!
暗闇から現れた和雅はド派手なシャツを翻して私達の前へと走り寄る。

「久しぶりぃー!お!ユエヅラ変えた?」

「うるさいわねぇ」

ヅラってゆうんじゃないわよ!その悪趣味なシャツ破いてやるんだから!

「んで?あん中に敵さんがいんの?」

「うん、ユエ説明してあげて」

めんどくさいなぁ、もう!
よく考えれば和雅なんて呼んだところで戦力に大差があるとも思えないんだけどね。




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