**********
俺の手が真っ暗だ…
いや、違う。
真っ赤だ。
濃厚な赤ワインを模したような真っ赤な、血だ。
鉄のような匂い。
生暖かい感触。
誰の…血…………?
「萌ちゃん!」
呼ばれてる。
ユエ、だ。
俺の可愛いユエ。
純粋で汚れなき俺のお姫様、俺が寝てたら心配かけさせてしまう。
起きなきゃ。
「萌ちゃん」
ユエ。
「あーるーじ」
「…ゆえ」
「萌ちゃん!」
俺は頭に鈍い痛みを感じながらもゆっくり起き上がった。
明らかに寝過ぎだな。
「ごめんな、ユエ、今何時…?」
「店の事なら全然大丈夫よん?それより具合は大丈夫かしら?」
ぼんやりする目がユエに焦点をあわせる。
…ん?
「髪型、変えたんだな」
「そうなの!炎ってば気付きもしなかったのよ?」
「よく、似合ってる」
金でウェーブがかった長い髪は、今は短くなって、肩の上を揺れている。
本当に、綺麗な、透けるような金の髪。
prev next