ガチガチに緊張していた少年も、最終的には少しはにかみながら出て行った。
かわいい子ねん。

「萌ちゃんに負けず劣らずの美少年よねぇ」

「…食べちゃダメだよ、ユエ?」

「失礼ね!」

ユエちゃんってば美少年より、大人の男が好きなのよねぇー!
萌ちゃんは別格として、やっぱ男は男らしくないとヤダヤダヤダァ!

私を抱く厚い胸板!
力強い腕!
太くて長いアレ!

きゃっは!
ユエちゃんってば乙女☆

「ユエ、その顔で接客しないでね?にやけてる」

「うわ、うざっ!」

「はいはい」

炎はシャツの袖を捲りなおすと、再びカウンターの中へ引っ込む。
不思議と料理とか上手なのよねー
珈琲は、萌ちゃんのが百倍おいしいけどぉ。

「客こないわねー」

「まぁ、平日だしこんなもんだよ」

ふーん。
つまんなぁい。

「それにここは、場所が場所だからね」

炎は苦笑していたけれど、それでもよさそうだった。
こんな場所、だから。
彼等は愛し合えるんじゃないかしらね?
誰にも邪魔されず。

誰からも否定されない。



「私も、一緒か…」

「何か言った?ユエ」

「いーえ?萌ちゃんの様子見てきていー?」

この世界は愛おしく、
酷く、残酷だ。

「いいけど、寝てたら起こさないでね?」

「りょーかいっ!」

光に満ち、愛に溢れ、
そしてその分
影をおとし、憎しみをうむ。

眠り姫はいまだ影の中に囚われて…?

「最高のシチュエーションじゃない?」

階段を上がって、薄っぺらい扉の前で私は笑った。

「我が眠り姫にして我が主、貴方のナイトが今助けに参ります」

炎なら、主が影にいれば光溢れる場所から手を差し出すんだろうけどね。
私はいかなる時も主の傍らに…。

どこへでもついていく。

必ず、力になるから。
ついていかせて。

萌ちゃん。






久しぶりに入った主達の部屋は、なんだか前より広く感じた。
大きなベッドに横たわるその体も、いつもより華奢に見えてしまうわ。
寝てるのね、萌ちゃん。

「…………」

少し寝苦しそうに萌ちゃんは、首を緩く振る。
また、夢見てるの?
苦しい?
つらい?

大丈夫、炎はどうしていいかわかんないって言ってたけど、私はわかる。
夢が恐怖をあたえるなら、そこから引きずり出せばいいのよ。

「萌ちゃん」

そう、目を醒まさせてやればいい。




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