カランコロン
「こ、こんにちは…」
「いらっしゃいませー…、?」
太陽も真上に昇った正午、開いたドアに営業スマイルをむけて、私は戸惑った。
この子…
「あ、あの」
「聖マリア神学校」
「……!」
白を基調とした、さながら神父を模した様な制服のソレは有名校のものだわ。
有名だけど…此処からだいぶ遠いし、何より今日は平日なのに。
「聖マリアの子がサボりかしらん?珈琲を飲みに来た風でもないし…何か用があって来たの?」
少しきつくなってしまった口調に、その子は怯みながらも答えてきた。
「あっあの…ボク、黒髪の人に会いに来たんです」
黒髪…?
うちの黒髪と言えば、
「どうしたの?ユエ」
「あっ、この子が『黒髪の人』に会いたいんだってぇー、知り合い?」
「萌黄君に?…いや、初めまして、かな。」
様子がおかしい私に気付いて炎がカウンターから出てくる。
この子の勘違いでなければうちの店の黒髪=萌ちゃんとなるんだけど…
はて?
萌ちゃんと常に一緒にいる炎が知らない?
「あ、いえ、知り合いとかじゃないんです…!ボク、不良に絡まれているとこを助けていただいて…その、お礼を…」
私と炎は顔を見合わせる。
まぁ、確かにそーゆー事をするのは萌ちゃんよねぇ。
何よりこんなあどけない子が嘘をつくとも思えないしぃ、今時お礼なんて感心じゃない!
「…ごめんね、せっかく来てもらったのに萌ちゃん今日体調崩してて」
「…え!?あ、そうなんですね、ぁの、これ」
わたわたとポーチの中から取り出したのは、赤いリボンと小さなクロスのモチーフがついている白い包み。
中身はクッキー、かしらね。
「わ、渡してもらえませんか?調理実習で作ったんです」
なるほど、少しこ洒落たこのクロスは校章ね。
よくみれば彼の胸にも光っているわん。
「わかったわ!ユエちゃんにまっかせてぇ」
「せっかく来てくれたのにごめんね、またいつでもおいで」
「…っ、はい!」
キラキラした目しちゃって可愛いものね。子供って。
まぁ、この子の顔のつくりが秀でているってのも確かよねぇ!
あっは!!将来有望ねぇ、神学校なら超金持ちだろうしぃ。
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