炎の腕は温かい。
俺の全部を許すようなそんな優しさを持ってるのに、きつくて俺が離れるのを許してくれない。

「炎、夢を見たんだ」

炎は黙って頷く。
律儀なバカ犬。

「コワイ、夢」

らしくないか?
俺が、こんなしおらしいまねしてさぁ?

「気持ち悪くなって外に出たら、絡まれた」

「……っ」

ギュッて、さらに力を込められて俺は安堵の息を漏らす。
苦しい、安心する。
矛盾してるのにしていない。

「あんま、加減できなくて…ワリィ」

「何言って…!そんな時に居れなくてゴメンね?ホント、落ち着くまでこうしてるから」

「炎が悪いわけじゃねーじゃん」

馬鹿な炎。

お前の優しさが、どんどん俺を甘くしてるんだぞ?
躾はきちっとしとかなきゃ、痛い目見るのは自分なのに。
ホント、馬鹿。

「仕方がないってわかってても、自分が不甲斐ないよ…俺」

「呼ぶつもりは…なかったんだけど、ホント、ワリィな」

優しい炎。
誰にでも優しくて、温かい腕。

ゴメンな。

俺は、その声が
腕が
優しさが。

俺のせいで色も無くして残酷になる瞬間を愛してる。

「炎、愛してる」

初めて知った愛だから?
こんなに不安になるんだろうか。

「萌黄君…?」

お前の存在が、俺の中で大きくなりすぎたんだ。
だから、ソレを無くしてしまったら俺は俺でなくなってしまう。

「炎、愛してる」

きっと、立ち上がることすら叶わない。

「愛してるんだ」

弱くなってしまった。
恐れ、は、強さを奪う。
弱くなった。

「萌黄君?」

「愛してる、だから」

強さを無くした。
でも、俺は手に入れた。
この存在を。
愛しくてたまらないヒトを。

「お前が死ぬ時は」

命より大切なヒトを。





「俺も一緒に逝かせて」




出来たよ、柘榴。
俺にも。
命より…大事な奴。







俺は、炎の答えも聞かずに意識を無くしちまったけれど。
答えなんかに意味はないんだってわかってた。
炎は俺と対極のようだけれど、真っ黒い部分は似通っているから。

言葉なんか、必要なかった。




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