カラン。

安い鉄パイプが、乾いたアスファルトを撫でる音がした。

「オニーサン、大丈夫?」

つくづく嫌な日だ。

「楽にしてあげようか?」


なんで、今日。
振り返った先にいるガキを見つめて溜息をついた。

どこのチームだろうか?
俺が炎天烈火の人間って知っててきた?
それとも、また、偶然?

どうでも、イイカ。

「具合わりぃの?かわいそーに、でも俺も一応チームなんか入っちゃってる感じでさぁ?オニーサンどっかで見たことあんだよね?チームの人間じゃん?ワリーけど潰しとこーかなぁって感じぃ?」

そうだ。
どうでもいい。
ドーデモイイ。

酷く、気分が悪いんだ。

「ゴタクはいい、潰すんだろ?クレバ?」

ナニモ、カンガエタクナインダ。







暗闇の中、鉄パイプが鈍く光る。

俺は揺らめく様にそれをかわしていく。
ダメだ、具合が悪い。
気持ち悪い。
なんだか地に足がついてる気がしなくなってきた。

「のらくら避けてんじゃねぇっつの!」

真っ暗だ。
意識が、沈んでいく。

でもマケレナイ。
炎が…心配するし、
炎に、合わないまま死ねない。

「コノォッッ!!」

「――――い」

「ハァ?なに…グッッ!!」

俺は炎の喧嘩を見とくのが大好きだけど、炎は俺が喧嘩することを何より厭う。
わからなくも、ないが。

「あ゛ぁっ?!ぁ゛!」

「わりぃな、クソガキ」

「やめ゛ッ!!」

確かにこんなの見せれたもんじゃねーし。

「や゛め゛でぇ゛…ッ゛!?あ゛ぁァァぁア゛ァ゛!」

弱すぎて、話にならないんだよ。

男は振り上げた鉄パイプごとねじ倒され、はいつくばった背後から腕を捻りあげられていた。
乱暴に倒された男のポケットから男の私物がアスファルトに散らばる。

へぇ、良いもの持ってんじゃん?

ペティナイフにジッポ、タバコ。
いいね、俺の好みばっかりだよ。

「ヤメッ!?助け…ャ゛ッ」

知ってるかい?
真っ黒に塗り潰された心には他人の悲鳴がここちいいんだ。
暗く、深く、何の感情も無いとこには、他人の苦痛がよく響く。

「泣いてみせろよ」

今日仕掛けてきたお前が悪いんだ。

だって今日は、
止める奴が誰もいない。




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