小さな箱を指先でゆっくり撫でる。

「主、ごめんね」

私の仕事、応援してくれてるの知ってるわ。
チームの時間が少なくなっても、主と一緒にいる時間が少なくなっても、ただ、私の為をいつも思ってくれてるのよねん?

私、何を返せる?
何か返せてる?

悲しくなりながらも私はリボンヘ手を伸ばす。
ブルーのリボンが解けて落ちていく。

「……ピアス」

黄色とオレンジを混ぜ合わせたような暖色の、丸い石が先端についたシンプルなデザインのピアス。
見る角度により揺らめく様に変わる色合いはさながら月みたいだ。
主らしいな、こんな可愛いピアス贈ってくれちゃうなんてさ。

あの人は、意外にキザな事を平気でやってのけてしまうから。
たまに、心臓に悪いのよ。

「…?何か書いてある」

箱の内側に銀色のインクで書かれた綺麗な筆記体。
主の…字よね、これ。

「To my ……」

全部捨てて貴方について来た私は、幸せものよね。



To my beloved woman of just one.

『ただ一人だけの愛しき女性へ』

ねぇ、こんなに幸せでいいのかな?
私…私…。

貴方からまた離れられなくなっちゃったじゃない。




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