誰もいなくなった店内には微かなアルコールの匂いと張り詰めた空気が漂っていた。

「萌黄君、さっきの話、ダメだよやっぱり」

「何故?」

カウンター越しに炎は俺を睨み付ける。

「危険だからに決まって…!」

俺は食器を片しながら思いの外いじわるな笑みを浮かべてしまった。

「何も言わないけどわかってんだろ?将之が誰のセイで入院したか」

「そ…っ、れは…」

「他に方法もあったのにあんなヤリ方しか出来なかったのは俺の責任だよ」

そうだよ、
他にヤリ方なんかいくらでもあったんだ。
なのに俺はあんな事をした、お前が怒れない事もわかってて。

「炎、俺は俺のヤリ方を悔やんじゃいねぇよ」

「でも罪悪感は感じてる」

「さぁね?」

「聞いたんじゃない、そうだって言ったんだよ」

炎はうんざりした表情で俺から目を逸らす。
何もかもお見通しってか?

「なら、なおの事俺がするべきだ」

「…〜〜〜ッッ!」

昔から、炎は俺が喧嘩をすることを嫌う。
危険だから、なんて薄っぺらい嘘を貼付けて。

お前の事なんか、俺だってお見通しなんだからな。

「俺の手が汚れるのがそんなに嫌か?」

素直な炎。
そんな顔してちゃバレバレだっつーの。




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