俺は痛みも忘れて地を蹴った。
野郎なんか気にも止めないでただまっすぐ和雅の方へと。
「…ッぐぁあっ!」
そんな俺を嘲笑うような那津の回し蹴りがまた俺を地面へと舞い戻す。
「フフッ、冷静さを欠いたら負けですよ」
那津はチラリと横目で和雅を確認すると、負ぶさっていた男と視線をまじあわせた。
上から下まで値踏みするような視線が、余り深い仲では無い…イヤ、もしかしたら初めて会ったんだと伺える。
ぼんやり、そんな事を考えて俺は息を吐いた。
「おや?目つきが変わりましたね」
体の痛みは限界で、
でも、それ以上に俺をつき動かすものがある。
倒さなきゃ。
和雅を、
取り返す為に。
「…!!」
重心を低く。
前を見据えて。
那津の鳩尾を狙って一発、直前で流されかけたが素早く引っ込めて今度は左で一発。
あんなにさっきまでやりにくい相手だったのに、今はさほど気にならなかった。
イケる。
「成る程、特攻隊長の地位は伊達じゃないわけですね」
そうだよほざいてろ。
鈴と仲がイイカラじゃねぇ、勝ち抜いて貰った地位なんだよ!
なのに、なんでそんなひょろい奴に負けてんだよ…ッ和雅!!
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