俺の言葉に那津は片眉を揺らしただけだった。

「へぇ、案外バカじゃないんですね」

「アタリ、ってか?」

何考えてんだよ副長。
ありえネーからまぢで。

「ヤメタ!バカらしい…ッツ!?」

「油断大敵、ですよ」

「……ぐっ!!」

両手をあげて試合放棄の意志を表した俺に、那津は思いきり拳をめり込ませていた。
油断していた一撃だけに俺は思わず膝をつく。

「言ったでしょう?暇つぶしだと」

それを見下ろした那津が不敵に笑う。

「頼まれた事を成し遂げられれば過程など問題では無い、ましてや隠す気など無いわけですし」

奴の足が動いた瞬間、俺は情けない話転がって避けるしか出来なかった。
やられた鳩尾がジンジンと痛む。

「に、してもがっかりだ」

刹那、

背筋が凍る感覚がした。
奴の声の低さにではなくて、奴の遥か向こう。

「ぁ、あ?かず…ッ?」

「何を…?」

「カズマサァァァアッ」

一人の青年が和雅を連れてやってくるのが見えたのだ…しかも負ぶさって!!
気を失ってる!?
怪我…!?

どーなってるんだ!
副長、これもアンタか!?




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