那津の右手が俺の襟元を狙ってせまる。
奴は本気で“攻め”に転じたらしい。
「ッブネ!いきなりかよクソッ」
勿論受け流すなんて器用な真似デキネェから叩き落としたけど。
「酷いですね、痛いじゃないですか」
「フザケやがって!」
「ええ、暇つぶしですから」
なんなんだコイツ!
負けたら言うことを聞け?
暇つぶし?
“頼まれた”……?
「お前どこの地区から流れてきやがった?」
「…流れてなんかいませんよ、遊びにきただけですからじきに戻ります」
「他地区の人間がわざわざ暇つぶしで来るほど南は穏やかじゃねぇぞ」
「………」
「ナリはともかくテメェだってチームの人間なんだろ?そんくらい常識だっつの!!」
「さぁ?腕に自信があると言ったら?」
イヤ、はったりだ。
おかしいんだ、こんだけ暴れて邪魔が入らないのは。
南は他地区よりいくらか平和だが、ソレは鈴の圧倒的な強さと副長の情報力あっての事。
長時間同じ場所に留まって、さらには暴れちゃってる俺を副長が見つけてないわけはないんだ……!!
なのに誰一人来ないって事は、
「頼んだ奴の名は“萌黄”?」
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