ただ、愛を厭う
快楽の波に揺られ静かに目を閉じ
激しい喘ぎで耳を塞ぎ
それ以外を切り捨てた。
ただ、無心に。
「デェッケー!炎クン身長いくつよ?」
演技など期待はしてなかったが、男は炎を見てなんとも間の抜けた声を出していた。
まぁイイケド。
「萌黄…センセ…?」
「あ゛ー…炎気にすんな、こーゆー奴だから」
「よろしくな?あぁ!炎クン萌黄が好きなんだって?」
俺は男の横から下がりコンクリート塀に背中をあずけた。
「はい」
今日は土曜日、炎は休日だし、俺は休憩時間中、男は万年暇人。
まさにうってつけ?
「言うね!萌黄は炎クンなんて相手にしてないってのに健気ダナァ〜!!」
「………!」
「アレ?怒っちまった?」
店からすぐの狭い空き地、なんにも無いそこには俺ら三人だけだった。
「いえ…痛いとこ突くなあと思って」
「へぇ!意外に余裕じゃん?その感じじゃ萌黄が犯されて泣くたまじゃねぇのもわかってんじゃねぇ?」
炎は何も答えなかった。
ただ、紅茶色の瞳から微かに冷たい物を感じさせて。
黒く沈んだ瞳が俺を見ていた気がした。
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