真っ暗な倉庫の中で倒れている柘榴組の人間はたいして廃材と変わらない。
ただ、そのなかに浮かぶ月だけが不釣り合いだった。
壁に背を預け、肩を小刻みに震わす…三日月の様に鋭い美しさと儚さを併せ持つ俺だけの月。
「お待たせ」
俺を見上げたその瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
ずっと泣いていたのだろうユエの目は赤く腫れだしていた。
「……ぁ、るじ」
目立った外傷が無い所を見ると一撃、もしかしたらそれ以前に負けたのかもしれない。
「ユエ、泣くな」
「…ッん、はぃ…す、すみっ…ませ」
俺はその場にしゃがみ込みユエの涙を乱暴に拭うと、謝ろうとするユエの唇にそっとキスを落とす。
「……っ、主!?」
「俺からのお礼」
次いでユエの腕を引っ張るとそのまま抱きしめる。
「―‥と、俺からのお詫び。怪我はないか?」
「な、ぃ…です」
「ほら、立てる?」
「……ッ、ウッ、ぅ」
ぽろぽろ泣き出してしまったユエに俺は苦笑するが、同時にすごく愛おしかった。
俺の我が儘に振り回されてお前が泣くことないんだから。
「あるじ…わ、わたし…役に立てなくて…ごっごめ…ふっ」
ユエは喧嘩が強くても女の子なんだから、こんな事をさせた俺が悪いんだよ?
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