目の前の人間が声を出せない状態になって、初めて自分の息が荒い事に気がついた。
やり…過ぎた。
謝罪の言葉は出ないけど。
「柘榴」
こんな俺をみたら、柘榴は何て言うだろうか。
怒るだろうか…
「らしくねぇな」
もはや真っ暗になってしまった街に他の音はナイ。
すべて闇の中。
炎、お前だけが俺の明かりだよ。
そして…温もりだ。
ポケットの中の無機質な塊が震え出す。
帰りの遅い俺を心配しているんだろう、着信は炎。
「はいはーい」
『萌黄君、今ドコ?』
「今ねードコダロ?」
『とぼけないで!ほら、迎え行くから』
大好きな炎。
俺には勿体ないくらい綺麗な心のニンゲン。
だからって、誰にも譲らないけれど。
「すぐの距離だから」
『もう!危ないじゃん!真っ暗だし一人で歩いちゃダメだよ!』
「俺は大人なの、ワカル?大丈夫だって」
『大人でも俺のお嫁さんなんだから!心配ぐらいさせてよ』
可愛いな、テメェが嫁だよ。
まったく、いつになってもお前は…
「マスターんとこ」
『……!すぐ行くv』
なんでこんなに好きなんだかな。
カッコワリィ。
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