南区は情深き朱雀の庭。
可愛らしい、炎の、庭。



だけど果たしてそれはどこまで正しいのだろうか。

ある人間はこう言った。

南の庭は、朱雀の庭というより朱雀を放し飼いにしたお前の庭のようだ。と。

「正解、かな?」

南区と西区を繋ぐ路地裏、古ぼけたアパートの屋上で俺は笑う。
時刻は深夜1時。
草木も眠る、というには些か早い気もするが、炎はすでに夢の中だろう。
なにせさっきまでは俺の中で頑張っていてくれたから。

そんなお疲れな炎を置いて、抜け出して来た先が、ここ。

まだ熟れきった中が熱をもって俺を焦がすけれど、そんな感覚だって夜風と交じれば快感を産む。
あんなに出したのにまた勃ちそうだ、なんて、まだまだ俺も若いかもしれない。

「変わらない、なぁ」

この街も、俺も。
生まれ育ったこの街を、俺は炎よりずっとよく知っている。
だからかもしれない。
俺はこの南区が好きだ。

そんな南区を炎が統べている。

それだけで俺はなんとも言えない気分になる。
俺の炎、炎の南区。
ならば南区すら俺のものと言ってもいいのではないだろうか?なんて、自分の考えに吹き出した。

そんなわけはない。

炎のだ。
ここは、炎の庭。

いや違うか?

「少し広い…檻、かな」

放し飼いにしてるんじゃない。
この広い檻に、餌の方が勝手に入ってきているだけなんだ。

「俺と、炎の、二人の檻」

なにそれ。
まぢ勃ちそうなんだけど。


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