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やるしかないだろ!


がばりと起き上がった。掛け布団がエレンの体からずり落ちて、冷たい空気が一気にエレンの肌を刺激する。
嫌な夢だった。
足が消えるような感覚が、まだ残っている。
顔を布団にうずめた。ひんやりと冷たい。

隣で寝ていたエレンも目を覚ましたらしい。隣でがさがさ動く気配がする。それでもエレンは顔を上げない。顔を上げたら、情けない顔を見られてしまうから。
「…エレン?」
隣から寝起きの声がした。ずっと動かないエレンを不審に思ったのだろう。
「…ん」
小さく返事をすると、少し冷えたエレンの肩にエレンの腕が回された。暖かい。
ぴくりとエレンの肩が揺れると、背中をゆっくりさすられる。子供扱いされているようだったけれど、それはやがて安心感を連れてくることに成功した。
「なあ」
エレンは囁くように言った。
「いま、夢をみたんだ。エレンと同じ大学を受けて、エレンは受かって…だけど、俺は合格のところにいない。補欠合格で…落ちたよりかは良かったって思ったんだ。だけど、だけど」
吐息が震える。
落ちた夢よりかは、ずっといい。だけど、妙に現実味がある。補欠だなんて。
吸い込んだ空気は氷のように冷たく、エレンの肺を冷たいナイフで切り裂いた。
「あのね、エレン」
エレンの耳元で、エレンが囁いた。優しく、柔らかく、暖かく。
「大丈夫だなんて、言えないよ。分からないもの。オレだってお前だって、落ちるかもしれない。合格するかもしれない。わからないよ。
でもね、怖いなら、頑張るしかないだろ。二人で同じ学校の、同じキャンパスに通おうって決めたんだから。今、やるしかないだろ」
「…うん」
エレンの言葉に、エレンは頷いた。
そうだ、やるしかない。今からできることだって、たくさんある。
まずはセンター試験、あと二週間。
たったの二週間、されど二週間。
エレンは隣のエレンの体に腕を回した。
「だよな」
力強く、頷いて。


140105 こまち
全ての受験生のみなさまへ。一緒に頑張りましょう…(涙目)