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しんげきようちえん!


※リヴァ×エレエレです。しょたえれ、桃尻注意。

今日はしんげきようちえんの運動会。きゃあきゃあとみんなで騒いで、家族も見にきて、転んだらすごく恥ずかしい日。
運動会の、お昼の前の徒競走。双子のエレンやジャンやミカサやアルミンは、ぐちゃぐちゃながらも列を作って自分の番を待っていた。
一つ前のレースで、エレンの双子のエレンが一位で駆け抜けた。エレンはエレンに向かってにやっと笑ってガッツポーズをしてみせる。
それを見たエレンは、「オレもいちいになってやる!」と拳を天に突き上げて意気込んだ。
そんな彼に茶々を入れるのは、いつも通りジャンだ。定番となっているので、誰も突っ込まない。むしろくびを突っ込めばとばっちりを食らうのは目に見えている。
「そんなこといっておまえおしっこちびるなよー!」
そう言われて黙っているエレンではない。勿論のこと、負けじと言い返す。
「ちびらねーし!ジャン、おまえほんとはちびってるからそんなこというんじゃねーの?」
「おれがちびるわけねーだろ!おまえこそ、こないだおもらししたんだろ!エレンがいってたぞ」
「ちっ、ちげーし!エレンがみまちがえただけだし!だまれようま!」
「だれがうまだコラ!ていうかなあ、いつもうまっておれのことばかにするけどな、うまは走るのはやいんだぞ!だからまけねーから!」
スタートラインに立ってぎゃあぎゃあと騒ぐ二人に、スターターのペトラ先生が困った顔で二人を引き離そうとする。
「ほら二人とも、位置について。よーいどんできないから、ね?」
諭すペトラに、しかし二人は聞く耳を持たない。
「なんだとこのちんかすー!」
「ちんこにかすなんかついてねーし!おまえこそいんぽー!」
汚い言葉が飛び交う二人に見兼ねたのか、リヴァイ先生が来た。地獄の閻魔様も真っ青な、園児にそんな顔をするのかというほど怖い顔をして後ろに立っているリヴァイにも、二人は口喧嘩に夢中で気づかない。そんな二人を、リヴァイ先生は襟首ををつかんで引っ張り上げた。
「わわっ!?」
「うお!?」
いきなり二人は宙に浮いて驚く。二人は殴りかかる寸前の、拳を振りかぶったままの状態で止まっている。
「お前らはペトラ先生の言うことが聞こえなかったのか?お前らが騒いでるせいで始めらんないんだよ。男なら口喧嘩じゃなくて実力で勝負しろ」
まるで地獄の底から響いてくるようなリヴァイ先生の低くて恐ろしい声に、二人は震え上がった。きんたまも縮み上がる。
「ご、ごめんなさい…」
二人して小さな声で謝ると、「わかりゃあいいんだよ」とリヴァイ先生はぽいっと二人を地面に下ろした。二人はほっと息をはく。少しちびった。
彼が空色のエプロンを翻してそこから去ると、ペトラ先生が気をとりなおして声をかけた。
「さあ、はじめるよ!用意はいいかな?」
園児たちは元気よく、「はあい!」と返事をする。どの子も一位になる気満々だ。
「じゃあいくよー!よーい…どんっ!」
ペトラのかけ声に、一列に並んだ園児たちは一斉に走り出した。ぱたぱたとまだ短い足を動かして、一生懸命走る。
その中でも一際早いのは、やはりエレンとジャンだ。二人はお互いに負けじと競い合っている。
必死な表情の二人も、ゴールが近づくにつれて疲れてきたのか歯を食いしばって走る。

と、ジャンが小石に躓いた。
「うわあ!?」
ジャンはとっさに、どこかに捕まろうと手を伸ばした。そして、その手が掴んだのは、エレンの体育着のズボンと、パンツ。いっしょくたに、ズルン、と引きずりおろしてしまう。別にジャンに悪気があったわけではない。ただの、事故だ。
だけど、エレンの尻がぴろ〜んと丸見えになってしまった。
「ふわあ!?」
突然のことに、エレンはどうしていいかわからなくて、両手で桃尻を抑えた。むっちりとした尻肉が、抑えている五本指の間から覗いている。幸か不幸か、前はちゃんと隠れている。
頭がこんがらがったままで、エレンはジャンとゴールをちらちらと二、三度交互に見た後にそのままゴールへと駆け出した。そのまま、ギリギリ一位でなんとかゴールする。その間ずっと、エレンは自分の尻を抑えたまま。

ゴールして、先生にパンツとズボンを引っ張り上げてもらって、一位の旗の後ろに並ぶ。
そこにはエレンが大笑いしながら待っていて、やっと我に返ったエレンは真っ赤っかになって顔を両手で隠してしまった。
「エレン、おしりまるだしだった!しかもおしりおさえたままはしって、ゴールしたの!ちょうおもしろかった!」
げらげらと笑いが止まらないエレンに散々冷やかされて、エレンは涙目になってしまう。泣くのを我慢して、握った両手はふるふると震えている。ぎゅうと噛みしめた唇もわなわなと震えている。
「うう、だって、だってえ!」
ずびずびと鼻水を垂らして、エレンに必死に訴えかける。が、エレンは全く聞いていない。笑い転げて、目の端に涙をためている。
「うわああああ!」
とうとう、エレンは泣き出してしまった。
そこにハンジ先生がやってきて、場を収めようと泣いているエレンの頭をよしよしと撫ぜる。
「あーこらこら、エレン、エレンをいじめないの。頑張って一位でゴールしたんだからいいじゃない。そりゃまあ面白かったっちゃ面白かったけど」
しかし、最後の一言でエレンはもっと大きな声で泣いてしまった。ハンジに悪気があったわけではなく、でもその言葉はエレンの気を昂らせるには十分だった。
「は、ハンジせんせーのばかあ!せんせーだっておもしろがってたんだろ!」
場を収めるつもりが、より一層ひどくしてしまった。泣きわめくエレンにハンジ先生はあちゃーと頭をかいて、「ちょ、パス!」とリヴァイ先生に押しつけて逃げてしまった。彼女は逃げ足だけは速くて、もう人混みに紛れてどこに行ったのかわからなくなってしまう。
いきなり押し付けられたリヴァイ先生は戸惑って、エレンに視線を合わせるようにしゃがんだ。パキンと膝の骨が小さく音をたてた。慰めるだとか、そういう感情をなだめるのに長けているわけではない彼は困ったような顔をしてエレンの顔を覗き込む。
「あー…まあ、お前はよく頑張った。最後まで走り抜けたしな。それに、途中までジャンとよく競り合ってたじゃねーか」
かっこよかったぞ、とリヴァイ先生が言うと、エレンはやっと声をあげて泣くのをやめて、「ほんとう?」と聞いた。エレンは目の周りを赤くして、目にはまだたっぷりと涙をためている。
「ああ、ほんとだ」
あまり笑わないために強張ったほおの筋肉を無理矢理動かして、リヴァイ先生は笑った。一見凶悪そうな笑顔だが、エレンはそれでよかったらしい。安心したように、エレンは涙をとめてにっこり笑って言う。
「やった!せんせい、すきー!オレ、しょうらいせんせーとけっこんするー!」
満面の笑みで言われたものだから、リヴァイ先生も迂闊にそれは無理だとは言えない。年の問題も性別の問題も、それにきっと、このくらいの年の子供はよく「結婚する」と言うのだ。軽々しく。未だ独身の三十路のことも考えて欲しいと、リヴァイ先生は常々思っている。そんな心内を知る由もない園児は、知らずしらずのうちに先生たちの心を抉っている。世界は残酷だ。
しかしそこに割り込んできたのが、エレンの双子のエレンだ。いままで散々エレンのことを笑い者にしていたくせに、今度は怒った顔をしてリヴァイ先生にむかってくる。
「だめなの!エレンは、オレとけっこんするのー!こんな、こんなおっさんとけっこんなんかゆるしません!」
ふんすか、と擬音語がつきそうなほど分かりやすく、頬を膨らましてエレンは怒っている。リヴァイ先生は、俺はおっさんか…と一人沈み込む。
そんなエレンを、しかし先ほどの恨みをまだ根に持っているエレンが突っぱねた。
「やだ!だってさっきおまえオレのことばかにしたもん。キライ」
つーんとそっぽを向いたエレンはリヴァイ先生にくっつく。つれないエレンの様子に、エレンはあーとかうーとか悩んでエレンに向かってプロポーズを繰り返した。口だけはよく動く。
「それは、ちがうの。えっと、すきなこほどいじめたくなっちゃうってかあさんがいってたし、それだもん。エレンはオレとけっこんしなきゃだめなの!とにかくけっこんするのー!」
リヴァイ先生を挟んで騒ぐ二人に、彼は頭を抱えた。このブラコン双子をどうにかしてくれ、と。


131201 こまち