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キスしましょ!


「リヴァイさん!キスしましょ!」
台所に立って朝ご飯の片付けをしていたリヴァイに、エレンは腰に手を回してにこにこ笑いながら、ちゅーとキスをねだった。
「なんなんだいきなり…まだ食器洗ってる途中だから後でな」
もう2人とも歯磨きは済ましていたけれど、まだまだ朝の仕事は残っている。洗濯、掃除機、風呂洗い、それから、リヴァイは仕事のチェックをしなければいけないし、エレンはきっと大学の課題がある。そんなことをしていればすぐにお昼ごはんの時間になるしその準備をしなければならない。
ただまあ、キスぐらいならすぐすむし、これが終わったらしてやるか、とリヴァイは濡れた手でエレンの手を腰から外しながら考えた。
後でな、と言われたエレンはえーだのあーだのうーだの言ってソファにぐだーと横になる。そんなエレンをリヴァイは母親のように咎めて、「洗濯物か掃除機でもかけてろ」と声をかける。エレンはんー…と生返事をしてしばらくそのままだったが、立ち上がって掃除機をかけ始めた。リヴァイはそれを尻目に食器洗いを済ませ、拭き、洗濯機へと向かった。
掃除機と洗濯機の機械の音。ウィーーン、ブオーーーー…ウィーーン、ガガッ、ブオーーー…。何かひっかかったような音がするがきっとエレンがテーブルの足か何かに掃除機をぶつけたのだろう。リヴァイはその音を放置して風呂洗いをすることにした。

風呂場から出てくると、エレンがソファに座ってリヴァイの方をじっと見つめていた。
「…なんだ?」
「リヴァイさん、ちゅーしよ」
ね、と口を開いて赤い舌先をチロチロと煽るように見せるものだから、リヴァイは近寄って、わざと触れるだけのキスをした。
すぐ離れていったリヴァイの唇をエレンは恨めしげに見る。
「なんで今日はそこまでキスをねだる?」
昨日も特に変わったことはなかったし、今朝も特に何もなかった…と、思う。
質問したリヴァイに、エレンはしかし言いよどむ。
「エレン」
何かあったのかと、その金色を覗き込む。
「…バカだと思われるかも、しれないんですけど。今日、オレ、夢でリヴァイさんが」ここでエレンはまた言葉を切って目を泳がせる。
「し、知らない女の人とキス、してて……」
だからなんというか、オレ、…としりすぼまりに消えて行く言葉に、リヴァイは(他から見たらなんの変化もないけれど)少し驚いたように目を見張って、それからエレンの頭をぐしゃりとなぜた。不安になったのだろう。それに、このガキは意外に独占欲が強いから自分のものだと自己の夢に主張したくなったのだろう。リヴァイにはなんとなくだけれど、その気持ちが分かった。自分の夢だから、嫉妬の矛先をどこにも向け様がない。けれど、もやもやするし、なんとなく不吉だし。
「だから、ね、リヴァイさん」
エレンはぽんぽんと自分の座った横をたたいて、リヴァイに座ってと促す。
「オレ、今日、ずっとこうして」
エレンはリヴァイを優しく抱きしめた。
「あなたに触れて、キスをして、幸せに浸りたいんです」
リヴァイの喉元に、ちゅ、と音をたててキスをおとしてエレンはダメですか?と甘い金色で見上げた。
リヴァイはそれに何も返事をしなかったが、うなじと背中にキスをした。エレンはくすぐったそうに身をよじって、でも幸せそうに微笑んだ。
「ねえリヴァイさん」
今日はまたよく喋るなとリヴァイは思った。
「幸せですね」
エレンは笑って言った。リヴァイもまるで陽だまりにいるみたいに心地よいと微笑んで、エレンに深い口づけをした。





130706 りーく
international kiss day