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目薬

「んんーかゆい…」
ごしごしと目をこするエレン。何故だか今日は目が痒くて鼻もむずむずする。
「なんでだー?花粉の時期終わったのに…」
ずるるる、とエレンは鼻をすすった。
「おい、目をあんまりこするな、鼻をかめ」
見咎めたリヴァイに、エレンは「ふぁい…」と返事をして言われた通りに鼻をかむ。
「今日、外で草刈りしてたからそれで痒くなったんじゃないか?」
「ああ、確かに!そうかもしれないです。
目薬さして、鼻しゅってやつやってきます」
「ん」
エレンは洗面所に行って、まず鼻にしゅ、しゅ、と薬をプッシュする。
次に目薬を手に取り、目に落とそうとした。が、うまくいかない。
「あれ?…あ、まただ…あれ?」
あまり何度も外したような声ばかりするので、リヴァイが見にいくとやはり、上を向いて未だきちんと目の中に目薬が入っていなかった。
「お前…」
不器用だな、とかまだやってんのか、とかそんな言葉をかけようとしたが、振り向いたエレンの顔に黙ってしまった。
かきすぎて目の周りを赤くして、痒いからか金色はうるうるとしていて、目の周りはさし損ねた目薬が。何だか、えろい。エロいんじゃない、えろいのだ。まだ真昼間だというのに、何故こうも(エレンは無意識なのだろうけど)誘ってくるのか。
リヴァイは眉間にしわをよせて、「貸してみろ」とエレンが持っていた目薬をひったくる。そのままソファに座って、膝の上にエレンの頭をのせた。
エレンは後頭部に当たる硬い筋肉質な腿の感触だとか、上にあるリヴァイの喉仏から顎のラインだとか、目薬を持つ骨ばった指だとかに気を取られて赤面する。目薬さしてもらうだけなのに、なんでこんな照れなくちゃいけないんだ。落ち着け、オレ!!自分自身を宥めるが、エレンの目に目薬をさそうとリヴァイが不意に俯いて。
「っ」
かっこいいなあもう!
「おい、目あけとけよ」
「え、あ、はい」
思いっきり目をつむりそうになったエレンの瞼を、リヴァイは左手の親指と人差し指でばっちりあけたままにさせる。
「うあ、」
目薬が目に入ると、たくさん目をかいてしまったから眼球にキズがついてしまったのか、とてもしみて思わず声を漏らす。
「おい、目薬ひとつで感じてんじゃねえよ」
「感じてっ!?」
苛々とした声がふってきて、別に感じてるわけじゃないんですけど、とエレンは口をとがらす。
もう片方の瞼も抑えられて、また一滴目薬が落とされた。
「ぁう」
またもや声を漏らしたエレンに、リヴァイはぴしりとでこぴんをした。
「いってっ」
「大袈裟だな…そんな痛くもねえだろうが」
額を抑えて顔をしかめると、ぴしりぴしりともう二度でこぴんされた。
「リヴァイさん人より力強いんだから手加減してください」
小声で抗議したが、リヴァイの耳には入っていないようだ。まあいいんだけど、たいしたことじゃないし、とエレンはリヴァイの腰に手をまわして腹に顔をうずめる。
「ねーリヴァイさん、ちょっと昼寝しましょうよ」
なんだか鼻水も気にならなくなったし、目も痒くなったし。
目薬を洗面所に戻そうとして、立とうとしていたリヴァイは、ため息をつく。ガキが、甘えてんじゃねえぞ、と。それでも、微笑んで見上げてくるエレンに、まあいいかな、と流されてしまう。
結局、リヴァイはエレンの頭をぽんぽんとなぜながら、2人仲良く束の間の眠りについた。

130816 りーく
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