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ハンカチ

あ、とエレンは声を漏らす。
そういえば今日、間違えてリヴァイさんに俺のハンカチ渡しちゃった。心内で呟いて、でもまあいっか、と思い直す。ちゃんと洗濯してあるやつだし、俺の口の中に平気で指を突っ込んできたりするし。言うほど潔癖じゃない気がするから。それに嫌だったら新しいのを何処かで買うだろう。それはそれで、今度は俺がちょっと嫌な気分になるけど。
少しの時間だけそんなことを考えて、それからエレンは目の前の課題に集中しようとする。今は、夏休みの課題を駆逐しなければ。

***

「あっれー?リヴァイそんなハンカチ持ってたっけ?てか、ーーブッフォ!!リヴァイがピンクのウサギとかっ…ブフッ!!!!」
昼休み、給湯室でリヴァイのハンカチを見たハンジが盛大にお茶を吹いた。
「おいハンジきたねえ、零してんじゃねえぞ」
顎から床へ滴るお茶を薄墨色の瞳で睨みつけて(というかむしろハンジを睨みつけて)言うリヴァイに、ハンジは笑いすぎて返事が出来ない。ぐい、とコップについだお茶を飲み干し、こぽこぽともう一杯いれてリヴァイはさっさと立ち去った。後ろではまだハンジが肩を震わせていた。


リヴァイのポケットに突っ込まれたハンカチの柄は、確かに彼の印象とは大分かけ離れたものだった。それは恋人で同居しているエレンのもので、いつもはそんな間違いはしないのだが。しかし昨夜、遅くに帰宅したのに加え何故だか妙に高ぶってしまったリヴァイは何度かエレンを抱いたので、珍しく朝起きれなかったのだ。しかも夏休みということもあって、自分の目覚ましを止めた後エレンの目覚ましは鳴らない。はっと目が覚めたときにはもう家を出る5分前だった。それから慌ただしく準備して、珍しく慌てるリヴァイに目を覚ましたエレンもあーだこーだと手伝って。結局間に合ったが、ハンカチを間違えて持ってきてしまったらしい。それに気付いたのは駅でトイレに入ったときで、だがまあハンカチなら小さなことだし、しかもエレンの物だ。リヴァイはハンカチを使うときいつもより入念にハンカチに手を擦り付けて拭いた。柄については、ハンジに笑われそうではあるけれどいいかな、と思った。その予想は見事に当たってハンジに大爆笑された訳だが。


結局その日、ハンジにハンカチのことを部署中に言いふらされて、リヴァイは好機の目のもとに晒されながらハンカチで手を拭うことになったのだった。


130815 りーく
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