情緒不安定 目を開けば、大嫌いなはずの人が目の前にいる。体の気だるさはもうなくて、ほんの少し喉が痛いだけだった。 目の前の彼の隣にはマグカップやらノートパソコンやら書類やら、仕事を自分のそばで行っていただろうことが見受けられて、エレンは「ほんとうに大嫌いだ」と呟いた。 だいきらい、という言葉は使ってしまえば案外楽ちんなもの。受け取る人によってはもう二度と連絡をとらないこともあるし、感情を全てひっくるめて閉じ込めてしまえる。 だからエレンは、リヴァイのことを大嫌いだと言う。 ちょっと早めに寝ただけなのに看病をしてくれるところだとか、寝ているときでさえ美しいところだとか、エレンの感情をぐちゃぐちゃにかき乱すところだとか。そういうものが、全部きらいだ。 「だいきらいなのに」 もう一度、今度は少しだけ大きめの声で呟く。 するとリヴァイはぱちりと片目を開けて、暫くエレンの方を眺めた。その視線にいたたまれなくなって、エレンは視線を泳がせた。 「…そうか」 リヴァイはそう言って、また目を閉じた。 その途端、エレンは急激な後悔に見舞われる。だけど、何もしない。だって、だって、エレンはリヴァイのことを嫌いなはずなのだから。 131121 こまち 風邪をひいたらぼうっとして、急に理由の分からない後悔やらに襲われるなあって |