モア | ナノ




りんごは落ちるけれどまだ落ちていない。割れた陶器は捨てられるけれどまだ棄てられていない。

時折、母の温もりが無性に恋しくなる時がある。それは双子の片割れも同じであるようで、時折、夜になると一緒の布団に潜り込んでくる時がある。
そんな時は優しく両腕で包んでやって、それからぽんぽんと背中をなぜてやる。そうすると彼はエレンの肩口に額をすりつけて、鼻から抜けるような声を漏らすのだ。
これが逆転する時もあるし、二人して温もりを恋しく思う時もある。
二人ともさみしい時には、肌と肌を重ねる。その方が暖かいからと、言い訳をして。そう、だって、肌を重ねても、口付けたことはない。
二人の体温は混ざり合って、布団を暖かくする。素肌に触れる布の感触が何とも気持ち良くて、それから片割れの触れる冷たい指先にびっくりする。

多分、この行為が許されるのは今のうちだけだ。いつかきっと、パチンと指が鳴らされて、魔法は解けるようにと仕掛けられている。


131120 こまち
原作設定でも、パロでも。
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