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偽りの憂鬱を愛撫する

バタン、と勢いよく執務室の扉を開けて入ってきたと思えば、そのままエレンはリヴァイの座る椅子の横に立つ。
「…」
「…」
お互い無言のままに。
きっとエレンはリヴァイから声をかけることを望んでいるのだろうが、そうはしてやらない。それが大人というものだ、とオトナを位置づける。

一区切りついたところで、いきなりエレンがリヴァイの肩を掴んで、ぐいとくちづけた。
エレンの片手は強引にリヴァイの手からペンをもぎ取る。
珍しいことに、エレンからリヴァイの唇を舌で割り込もうとする。いやに性急さを感じる口づけに、リヴァイは無理やり唇をひっぺがした。
エレンは自らの膝に手を当てて、腰を屈めた体制で、リヴァイを見つめる。その唇は唾液で艶かしくてらてらと光っている。
「エレン、ーー」
「抱いてください」
リヴァイが何事か言い終わる前に、エレンが言った。
リヴァイが何かあったのかとエレンの瞳を覗き込もうとすると、エレンはそれを感じとったかのように目を伏せる。ばさばさと長い睫毛がふるふると震えている。
リヴァイは椅子から立ち上がって、エレンの髪を掴んで上を向かせた。
「酷く、してください。すべて、すべてーー…」
エレンの要求に応えるように、リヴァイは荒々しくキスをする。かさついた唇が、エレンのそれと触れ合った。
エレンは満足そうに微笑んだ。求めれば、いつだって優しい彼は、こうしてくれる。


131120 こまち
タイトルは告別様より
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