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クラムボンはぷかぷかわらったよ。

「ん」
リヴァイはエルヴィンに向かって、執務机越しに書類の束を差し出した。
「ああ、ありがとう」
エルヴィンはにこりと笑ってそれを受け取り、また視線を手元に移す。日の光が当たって、彼の色素の薄い睫毛がキラキラと輝き、頬に長く影をおとしている。
彼はため息をつくほどに美しい。こうして、ほんの少しの機会についつい眺めてしまう。それから、この男に愛されているという満足感のようなものを感じるのだ。それはいつもの言葉や行動、たまの夜の情事で確認すること。だけれど、こうして見つめていて何も言わないのだし、何故だか彼に愛されているという確信に似たようなものをリヴァイは感じる。
「エルヴィン」
それは、思わず、といった調子でリヴァイの口から音が転がり出る。エルヴィンはリヴァイの声に口角を上げて、手元におとした視線はそのままに、返事をする。
「なんだい?」
「好きだ」
たった一言、いつもはあまりリヴァイからは言わない言葉。
エルヴィンはその言葉にあまり驚いた様子もなく、動かす手を止めない。
「ああ」
開けっ放しの窓から北風が入ってきて、エルヴィンの声をさらって行ってしまった。けれどリヴァイの耳にそれは確かに届いて、聞き届けたリヴァイは背を向けて部屋から出ようとする。
「わたしもだよ」
もう一度エルヴィンの声が、今度ははっきりと聞こえた。リヴァイが顔をそちらに向けると、彼はリヴァイの方を向いて、やはり柔らかく微笑んでいた。この季節とは正反対の暖かい表情だと、リヴァイは思う。
「フン」
今度こそリヴァイは背を向けて退室した。
きっと、彼の返事は聞こえても聞こえなくても、自分は満足だったのだろうと思った。


131108 こまち
タイトルは宮沢賢治の「やまなし」より
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