押し付けたもの | ナノ


君にゾッコン


ただ一言言えばいいのだ。体がもう限界を訴えているし、これ以上我慢できるかと問われれば無理だと即座に答えるだろう。だけど、状況がそれを許さない。なんで、なんでこんな時に限って。彼はぎゅっと目をつぶって耐えるしかなかった。


***


別に、いつも通りのことだったのに、ジャンが何に腹を立てたのか、よくわからない。アルミンとエレンは幼馴染で、いつもよく一緒にいるし、喋ってるのに。確かにアルミンと付き合っているジャンの立場からしてみればおもしろくないのかもしれないけど、交友関係は認めてくれていると思っていたし、これでもエレンやミカサと関わる時間は減っている。なのに、なのに。

その日の昼、ジャンとアルミンは昼餉をとるために食堂にいた。ちょうど昼時で、調査兵団のいろんな兵士が集まってきていた。そこに珍しくエレンが現れて、二人を見つけて話しかけた。二人にと言っても、やはり幼馴染のアルミンと話す方が多く、ジャンはやはり口数少なくなってしまう。エレンはリヴァイ兵士長の監視付きだからといつもより早めに切り上げていったが、どうもそれが気に食わなかったようで。
アルミンはそのせいで、訓練の休憩中に、ジャンに木の幹に押し付けられていた。訓練場からは少し離れていて、今の2人の雰囲気とは正反対の穏やかな空気の場所だ。アルミンの目の前にはイライラとした表情のジャン、顔の左にはジャンの右手がギリギリと幹を押している。
「なんでッ…」
いつもいつも、あの死に急ぎ野郎と、と言葉が続けられる。
がしかし、アルミンはその言葉を聞いてはいるが理解はしていない。いつもはジャンの話を(いやジャンの話と限らず、人の話も)ちゃんと聴いているのに、今は集中できない。
なぜか。それは、アルミンが今、猛烈な尿意に襲われているからだ。
もともとアルミンは、訓練が一区切りついたら厠に行こうと思っていた。だが厠に向かおうとしたとき、ジャンがいきなり勢いよくアルミンを引きずってここまで連れてきた。訓練中に結構な尿意をもよおしていたアルミンは、時間が経つにつれて自らの膀胱が限界に近づいて行くのを感じていた。

ただ一言、厠に行かせてくれと頼めばいいだけの話なのだが、何しろ今のこの雰囲気では言い出せないだろう。ジャンに嫌われたくない、だけど尿意に耐えられるかと言われたらもう限界。けれど漏らしたらジャンに嫌われるかもしれない、確実に引かれる、そんなの嫌なのに。
ああだけど、もう漏らしてしまいそうだ。アルミンは尿意に耐えるために手を握りしめて、力をいれてふるふると震えている。涙が真っ青な瞳を覆い、漏らさないようにと一生懸命我慢している。
そんな彼の異変に、しかしジャンは気づかない。なんとも返事をしないアルミンにしびれを切らしたのか、ジャンは右手をもう一度ドンッと幹に叩きつけ、膝をアルミンの下腹部に押し当てた。
「なんとか答えろよ、アルミンッ…!」
多分、彼に悪気は無い。返事が欲しかっただけだ。
けれど、アルミンは下腹部を圧迫されたことで、最早耐えることなどできなかった。
「ぁああっ…じゃん、やめッ、もれ、るッッ」
声をあげたところでもう遅い。
シャンもやっとアルミンの辛そうな表情に気づいたが、時既に遅し。
「ひ、ゃぁあッ……!」
アルミンは耐え切れずにじわじわと尿を漏らし、遂に勢いよく着衣のまま放尿してしまった。
白い兵服に黄色の液体がじわじわと染み込んで流れてゆく。生暖かいその感触が気持ち悪い。だがずっと我慢していた尿を排出できたことで、尿道から何かよくわからない、快感のようなものが湧き上がってくる。
「アアア…っは」
がくがくと膝が揺れて、アルミンはジャンの方に倒れこむ。長かった放尿は終わり、服に染み込んだ尿が風にあたって冷たくなっていく。
「アルミンっ!」
ジャンは慌ててかれを抱きかかえた。
「ごめん、ジャン、引いたよね…?汚いし、離れて」
アルミンは離れようとするが、ジャンはアルミンを抱きしめた。
「俺、アルミンのこと何も見てなかった…お前が厠行きたかったのも気づけなかった。さっきのも、ただの八つ当たりだ。あの野郎と、すごく仲がいいから。ごめん」
アルミンが驚いてジャンの方を見ると、彼はアルミンの肩口に顔をうずめていた。けれと彼の耳は赤くなっていて、アルミンは下半身のことを少しだけ忘れて、ふふふと笑った。
「僕も、これからはジャンと一緒にいれるじかんをもっとたくさんつくれるようにするよ。ただ、エレンとは幼馴染だから、それは分かってほしい」
アルミンの言葉に、ジャンはこくりと頷いて言う。
「ああ…ごめんな。
とりあえず、着替えに行くぞ」
ジャンはアルミンを抱きかかえて、よっこらせと立ち上がった。



131105 こまち
はなつむりへ。いつもお世話になってます。遅くなってすみません。失禁書いてて興奮しました。