ゴミ箱 | ナノ


あさのおはなし


03:24 a.m.

寝苦しさに、エレンは目をぱちりと開いた。何度か目を瞬いて暗闇に目を慣らす。月明かりすら入り込まない地下室は、松明の灯りも消されると真っ暗になる。外には寝ずの番をしている兵なんかいないから、夜に目を覚ますと、一瞬夢か現か分からなくなる。
ぼんやりとした視界と思考のままに、エレンは若草のような緑色の瞳を胸元に向けた。そこにはやはり、双子の片割れがぐっすりと眠っている。仰向けに寝るエレンに彼はうつ伏せになってぎゅうと抱きついて寝ているのだから、どうりで寝苦しい訳だ。いつもは自己主張の激しい銀色の瞳も、まぶたが閉じられればその色は隠されていた。昼間とは違って静かなエレンをぼうっと見つめて、エレンはエレンをどかそうと腕を上げようとした。けれど左手はエレンに拘束されているし、眠くて腕を動かすのも億劫だ。エレンは彼をそのままにしておくことにして、重いまぶたで緑色の目を覆った。虫の羽音も誰かの足音も、ただのひとつもしない静かな闇に、エレンもかえる。


05:30 a.m.

「オラ、起きろ」
低い、聞き慣れた声にエレンは意識を浮上させる。
「ふあ、あ…おはようございます」
大きな欠伸をしてからエレンは起こしにきたリヴァイに挨拶をした。ベッドの隣に立ったリヴァイは、もう団服をぴっちりと着ている。
夜中に一度起きてしまったせいか、少し寝足りない気がする。けれどそんな甘ったれたことは言っていられなくて、エレンは体を起こそうとした。
「んん…」
下の方からくぐもった声が聞こえてきて、ああそういえばこいつが起きなければ自分も体を起こすことができないのだと思い出す。仕方なしに拘束されていない方の手でエレンをどかそうとすると、その手をぱしりとはたかれた。
「あとちょっと、ねさせてえ」
寝ぼけた声でエレンが言う。まだ頭の中では夢が鮮やかな幻想を見せているのだろう。柔らかそうな唇がふわふわと動く。しかし、まだ隣にいたリヴァイがそれを許さない。
「起きろっつってんだ、クソガキ。はやく起きろ」
べしん、と目を閉じたままのエレンは頭をはたかれた。その衝撃はエレンの頭を通ってエレンの胸にも伝わる。微かな衝撃だったが、それでも直に受けたエレンの方はそうでもなかったらしくぱっちりと目を覚ましていそいそとエレンの上から退いた。それを見届けて、リヴァイは地下室から出て行く。
「ん、ぁう」
しかし、エレンが退くときに、エレンの腕に触れた。すると触れられたエレンの腕はびりびりと刺激を脳に伝えて、それがくすぐったいような少し心地の良いような、エレンは思わず声を漏らしてしまう。きっとエレンにほぼ一晩中上に乗っかられていたせいでうでが痺れてしまったのだろう。
エレンの声を聞いたエレンが、にやりと怪しい笑みを浮かべた。
「エレン、腕しびれちゃったの?ごめん、オレのせいだよな。責任持って、オレが着替え手伝ってやるよ!」
無駄に銀色をきらきらと輝かせて、エレンは楽しそうにエレンの寝巻きに手をかけた。これは、だめだ。何がって、多分着替えさせるだけじゃあ済ませない。だから朝餉の時間にも遅れてしまうことになるだろうし、そうしたら班の先輩たちに迷惑をかけることになる。それにきっとなにがあったのと聞かれ、エレンは恥ずかしくなってしまうだろうし、そんなエレンの様子を見てエレンは銀色を揺らして笑うだろう。全てが容易に想像できて、エレンは緑色に焦りの色を混ぜて抵抗する。
「やっ、やめろばか、っあ」
けれどエレンはわざとしびれた腕をがしりと掴んで、エレンが抵抗できないようにする。
「力入んないんでしょ?いーじゃん、ね、ほらおとなしくして」
「ずりーんだよそうやって、ぁん!ばか、ほんとにやめろ!うわあっ!?」
ベッドの上で繰り広げられる攻防戦は、しかし興奮した二人がベッドから転げ落ちるということでひとまずの終わりを告げた。どたん、という大きな音をたてて二人はベッドから転げ落ちた。エレンはすぐに立ち上がって、未だ痺れる腕をぎこちなく動かして手早く着替えてしまう。そんなエレンを眺めて、エレンはつまらなそうに唇をとがらせた。不本意だが、今は我慢するしかないと彼も着替えることにした。部屋の出口では、既に着替え終えたエレンが待っている。


07:58 a.m.









131206 こまち
ほんとは捧げ物にしようと思ってた。一日全部書くつもりだったけど飽きた。中途半端だけどいちおあげときます。
続きは書くかなあ…