「だから言ったじゃろ」


優しい声を掛けないで欲しい。いっそ笑って欲しかった。
いつもの見慣れた笑顔で、小ばかにしたように。


「ほれ、こっち来んしゃい」


そんな風に優しく笑わないで。


「馬鹿にしないの?」
「何がじゃ?」
「私、フられたんだよ」


雅治に散々無理だ無理だ言われてたのを無視して、好きな人に告白しに行った。行ったけど。


「馬鹿にして欲しかったんか」
「雅治が止めておけって言ってたの無視してフられたんだよ、呆れてんでしょ?」


見事にフられた。友達でいたいって。怖くて逃げ帰った放課後の教室には、雅治が何時ものように一人で佇んでいた。


「俺が言いたかったのは」
「…」
「お前さんには、俺が一番お似合いって事じゃ」


泣くな。と私の頭をくしゃりと撫でた雅治の手はとっても温かくて大きくて、私に甘い錯覚を起こさせる詐欺師の罠だと思った。


「名前、好きじゃよ」


ちりちりと痛む心に、雅治の温もりが滲んでいく。
抱き締められたまま、私は好きだった人の輪郭を思い出して、また涙を流すのだ。










さよなら、初恋。




END.

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私の中の仁王は優しい人。



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