「仕事で疲れた。寝る」
そう言って名前先輩は居間にいた俺の横を通り抜け、ベッドに潜り込むなり寝息を立て始めた。























「俺と付き合って下さい」


後にも先にもあらへん、当たって砕けろ。そんな覚悟で告白した。俺よりちょっとだけ背が高い、左の耳たぶにひとつだけピアスを開けていた名前先輩に。

俺の言葉を聞いた名前先輩は、物凄い速さでゲームのコントローラーを操作していた指の動きを止め、簡潔に「ええよ」と返事してくれた。

その後に抱き合ったりとかは一切あらへん。俺の部屋で二人してゲームの続きを進めただけや。


「アカン光、回復尽きた」
「せやから調合用に素材持っとけ言うたやないですか」






そんな中学生時代の淡い思い出を振り返りながら、規則正しく呼吸して眠る名前先輩の横顔を見つめる。…ええわ、俺も眠いから寝たろ。ちょっと引っ付いて色々もしたかったけど無理強いは出来へん。

そっと名前先輩の横に寝転がる。先輩の耳には、俺とお揃いのシルバーピアスが誇らしげに輝いていた。いや、実際輝いてへんな。部屋暗いし。


「化粧落とさんでええんか」


ぽつりと耳元で呟いても当然先輩は起きへん。それどころか眉間に皺を寄せて壁側を向きおった。肌荒れても知らんで。

腹立つから名前先輩に抱き着いてやる。何で腹立ってるかはアレや、俺やって構って欲しい時くらいあるっちゅー事や。
俺より高かった背はとっくに追い越してやったので、すっぽりと腕の中に収まる名前先輩。

壁側を向いていたのに、温もりが心地好かったのか俺の胸に顔を擦り寄せて来おった。あっち向いたりこっち向き直ったり現金な奴や。あーあースエットにファンデーション付いた。

ちょっとだけ色が戻ってきた名前先輩の茶色の髪に鼻を埋めると、自分と同じシャンプーの香りがした。
その香りと温かさに全部全部溶かされて、意識が朦朧としてくる。
阿保らしいけど、体も全部溶けて先輩と一つになった感覚に陥った。重たい瞼を少しだけ開けて先輩を見ると、やっぱり気持ち良さそうに俺の腕の中におって。




ああ、どうかしとる。俺はこんなにこの人…名前先輩に惚れとる事も、それも悪くないと考える事も。





「明日は先輩も仕事休みやから、構って貰うんや」











END.

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構ってちゃんの光が好き。



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