「独り占めしたいから、クローゼットに詰め込んで誰にも見せないようにしたい」















世の中には常識、マナー、ルールがあってな。そこから出た人間は問答無用で白い目で見られて、最悪捕まってしまう。
まぁ、たっくさんの人間が暮らす世界に規律っちゅーもんはあって当然やと思うし、実際それで微妙なバランスで平和が成り立っているからオッケーなんはオッケーなんやけど。







君を
 閉じ込めてお
      く
      事
      すら、今の
          俺
          に
    。やんな痛苦は



もうな、だからいっそ殺そうかとも思った。非道徳万歳。でも殺したらやっぱりそこまでやんか。会えない触れない俺捕まるで良い事ひとっつもあらへん。うちのテニス部の部長に言わせれば「無駄多いで」ってな。

せやから、次はやっぱり近くに住みたいって思った。いつでも会えるから一緒に住みたい。これが同棲ってヤツや。
で、で、一緒に住もう言うたら「いいよ」って言ってくれたから今住んどるやんか。でもこれアカン。いや一緒に住める事はええねん。でも帰り遅くなったり連絡途切れたりした時の不安っちゅーか恐怖が半端なくなってしもた。浮気しとるんやろか?事故に遭ったんやろか?それでもう超メール送信。送信500通越えたら送れんくなったから次電話。これ俺も疲れるねん、流石に。親指の指紋若干薄くなったわ。いや治るんやけど。

これもアカンなー思うて、何や人間とかルールってホンマ面倒臭いなぁ。きっとこんなん言うたら俺の事「異端」って感じの目で見られるんやろなーうわー凹むわー。でもまたそこで世界を縛ってるのがルール、常識、正常やろ。また出て来たでコイツ。どんだけ俺の事嫌いやねん。

俺の目に映る場所にずっと居て欲しいだけなんや。なのにそれを邪魔されんのがめっちゃ腹立つ。



「って思っとった。」
「そうだったんだね」


俺の目の前には可愛い名前。常識があってマナーを守れて礼儀正しい俺の大好きな名前。でもさっき、不意に「光を独り占めしたいから、クローゼットに詰め込んで誰にも見せないようにしたい」なんて言われた俺は、ついベラベラと常日頃考えていた事を名前に話してしまった。

名前はうんうん頷きながら訊いていてくれて、俺はもうそれだけで嬉しかった。


「光はさ」
「おん」
「きっと私と同じだね」
「そっか」
「私も光が好きだから、ずっとここに居て私だけ見てて欲しいんだ」

にっこりと笑った名前に釣られて俺も笑う。この狭い小奇麗な部屋が俺達の世界で構へん。名前を抱き寄せると、自分と同じ洗濯洗剤の香りがして安心した。


「でも私、いっこだけ光と違う所があったよ」
「どこ?」
「私、光に私の事意外考えて欲しくない」
「それは俺もや」
「ううん」


脇腹に広がる鋭い痛み。

そこにどっと何かが集まっていく感覚と、瞬時に溢れる脂汗。
名前の名前を呼びたくて、でも痛くて声が出なくて。俺は目の前の、黒い何かの柄を持った名前を見つめた。笑っている。俺は視界がどんどん渦を巻いているのを、他人事のように冷静に受け入れていた。でも名前の顔が見られないのが不安で怖くて、俺は泣いた。泣きながら必死で眼球を動かして名前を探す。頭が痛い。



「私、光を殺してでも一緒に居たいって思ってる」



遠くなっていく耳で、大好きな名前の声を訊けた。感覚も何もないけど、きっと今俺は笑tt





END.

*******************

「例えば」を何回も「たとえんば」って打ってむしゃくしゃしたからギャグからドロドロに変えてやった。今は反省している。
(20代/接客業/女)
 
 


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -