朝、天気は良好。降水確率0%
薄い毛布に包まれながら、私の意識は徐々に覚醒していく。いや、させられた。
人肌モーニングコール
耳元で鳴り響く携帯アラーム。夢の中を漂っていた私を揺さ振り起こした犯人はコイツだ。
しかもこのアラームをセットした筈の彼は、もう既にベッドの中にいない。温もりを求めて伸ばした腕を引っ込めた。
…あーもうピーピーピーピー煩いな。起きてるっつーの。
大体この携帯使って何年だよ。未だにアラーム音が初期設定音か。何か音楽入れればいいのに。
「名前」
なんて考えていたら、彼の声が聞こえた。携帯の振動と喧しいアラームを止めた手は、ぽん、と私の頭に置かれる。香水の香りが漂って、思わず口角が上がった。
「何をニヤニヤしているんですか」
「おはよう、永四郎」
「おはようございます」
片目を開けて挨拶すると「起きなさいよ」なんて言いながらネクタイを締める彼。
「私、仕事休みだよ」
「知ってます」
右手に腕時計を着けながら洗面台へ速足で向かうところを見ると、少し寝坊したみたい。珍しいなぁ…
もぞもぞと自分の体温が残るシーツから這い出て、伸びをする。テレビをみると、美人なお天気キャスターが指し示す日本地図には、全て太陽マークがついていた。あれ、このキャスターって最近結婚したんだっけか。
「相変わらず酷い寝癖」
「…止めてよ」
洗面所から戻って来た永四郎が、私の頭をくしゃくしゃ撫でる。香水の香りに混じって、嗅ぎ慣れた整髪料の匂いが鼻を掠めた。
「嫌がらせに起こしたでしょ」
「さあ」と惚けながらスーツの上着を羽織る後ろ姿が様になってて、また私はニヤニヤを抑え切れずに笑う。
「朝から幸せそうですね」
「お蔭様で」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
鞄を持ってこちらに近寄り、行ってきますのキス。永四郎の日課。見送る私も、これが日課。
「そうだ、帰りに卵買ってきて欲しいな。あとはね…」
「トイレットペーパー」
「あーそう、それそれ」
天気は良好。平日の休み。
彼は仕事だけど、朝から幸せ。
END.
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「これお前の願望だろ」と思った方。
正解です。ご褒美は飴ちゃんです。