折角の休みに、雨が降っている。
洗濯物がちっとも乾かない。
アイロン台の脚が壊れた。

そして、

恋人と喧嘩した。


















しとしと降り続く雨と、雨雲を見上げてため息を吐く。いいや、今日は洗濯物は諦めよう。洗濯籠を掴んで、ベランダから室内に入る。…と、リビングのソファに腰掛けながら、こちらに背を向けて新聞を読んでいる彼。

普段はとっても大人でクールなのに、こういう喧嘩をした時だけは子供のように拗ねる。そして、決して折れない。私が手に持つ洗濯籠には、彼の仕事用のシャツが入っていて。背を向ける彼と相まって、無性に苛立ちを募らせた。結局私も子供だ。分かっている。


折角の休日。雨降り。
彼も仕事がお休み。なのに、



(…嫌だなぁ)



洗濯物を乾燥機に放り投げ、スタートボタンを押す。アイロン台が壊れてしまったので、このままだとシャツがしわくちゃになってしまう。なんだかそれも嫌。

でも、こちらから「新しいアイロン台買いに行こう」と話しかけるのも何だか負けたみたいで嫌だ。かといって黙って出て行くのも角が立つ。でも…
心の中で唸りながら浴室のバスマットを踏むと、じんわり靴下が濡れた。うわっ、朝にシャワー浴びてそのままにしたな、アイツ。

またリビングに戻ると、定位置のソファの上で今度はニュースを見ている彼。森林伐採のうんたらかんたらって、それ本当に見ているんだろうか。


折角の休みに…


ちくりと心が痛んで、それを払拭する為にコーヒーを入れることにした。だって、今日はアイツが悪い。ちょっと湿った靴下でフローリングを歩いて、「ああ、フローリングの拭き掃除でもしよう」と考えていたら手に取ったカップがふたつだった。



「永四郎」



それで、何だか急に泣きたくなったのと、馬鹿らしくなって。




「ごめんね」





ゆっくりと振り返った彼は、小さな声で「いいえ」と言ってから立ち上がった。


「砂糖はいりません」
「知ってるよ」
「なら結構」
「あ、ねぇ。アイロン台買いに行こう。脚壊れちゃった」
「もう随分使ってましたからね」
「ついでにお買い物」
「はいはい」


「なんで喧嘩してたんだっけ」
「忘れました」
「嘘だぁ」


私たちが外に出る頃には、もう雨は上がっていた。






END.

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喧嘩すると黙るタイプっていますよね。
大人な永四郎と名前さまでした〜

 


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