「このマスカラ超着くさ」
「貸して貸してー」
「ねーねー、ぬーがらいいトリートメントねーらんがや?染めたらパサついて酷いんさー」
「最近乾燥するもんね」
「やさやさー」
「あたし彼氏出来たさ」
「じゅんにか名前」
「えーいいなー」
「あ、昨日告白してきた奴?」
「平古場くんかー」
「違う。木手くん」
「「「えっ」」」
「えっ」
《神のみぞ知る》
「凛、ぬーがやちゃがんねーらんど」
(凛、何か元気ないぜ?)
「…フラれた」
昼休み、机に突っ伏しながらうなだれる平古場のもとへやって来た甲斐。人がまばらな教室に、その声は寂しく響いた。
「じゅんにか」
珍しいな、と甲斐が前の席から椅子を移動する。平古場は少し顔を上げて甲斐を一瞥すると、ぽつりぽつりと話し出した。
「わん、今回は本気だったさー」
「そうか」
「即答だったからその場はるくぅショックじゃなかったけど…ああーもうだみぃやっさー…」
告白するよりされるパターンが多い彼からすれば、勇気のいる行動だったらしい。甲斐は、ショックで唸る平古場を困ったように見ていた。
甲斐も女の子にはもてる方だが、的確なアドバイスや励ましが出来る程恋愛には慣れていないようだ。
「平古場くん、甲斐くん」
「あ、木手」
「今日の練習メニューを…どうしたんですか」
別のクラスから練習表を片手に現れた部長にすら、平古場は意識半分の顔を隠せずにいた。
部長…木手永四郎を見ながら、平古場は更に溜息を吐く。
「永四郎には分かんねーらんよな…恋する気持ちも、恋に敗れる気持ちも…」
唇を尖らせる平古場に、甲斐が思わず苦笑する。木手に八つ当たりに近い嫌みを言っても、彼ならひらりと受け流すに違いないと思っていたからだ。
しかし、返ってきた言葉は甲斐の予想を遥かに越えていた。
「恋くらい知っています」
「はいはい」とでも言うような軽い口調で、あっさりと返した木手。目を見開いた甲斐と、驚いたように顔を上げて固まる平古場を怪訝そうに見る。
「何ですか」
「…彼女いるぬか?」
「います」
「「えっ」」
「一々煩いですよ」
「へぇー木手くんってちむじゅらさんやー」
「やさ。あっ!でも取らないでよ!わんの彼氏なんだから!」
「なんくるないさー」
「絶対名前殺されるって思ったさ!」
「うちもー」
「ちょっ…ちむいさー!!」
「今はあらんよー」
メイクポーチを持った女子達が教室に入るまであと30秒
その中の女子一人と、木手永四郎が見つめ合うまであと1分
それに気付いた平古場が更に凹むまであと1分30秒
それは神のみぞ知る事。
END.
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チャラい女の子×木手
告白は勿論…どちらでしょう?
女の子達の会話は雰囲気だけで読んで頂きたかったので、わざと翻訳していません。