ピリリリ ピリリリ

携帯の着信音で目を覚ました。
眠い目を擦りながら「はい」と電話に出る。誰やねん。今日は部活休みやろ。



「白石くん」



上機嫌な女の子の声。



「なんや、名前」
「買い物に行こうじゃないか」
「…断ったら?」

「君の可愛いカブトムシの虫カゴが大阪湾に浮かぶ」
「うわぁ俺実はめっちゃ買い物行きたいねん」













 
「買いたいモンあるんか?」
「うん、まあね」


俺に電話をしてきたこの同級生兼…彼女。名前は名前。
手ぇ繋いどらんと、あっちこっちに行ってしまう好奇心旺盛な名前は、今も俺の手を引きながら商店街を歩いとる。…なんや、飼い犬に引っ張られる飼い主みたいやな。



「白石は何か買わないのかい」
「俺?俺は別に…」
「可愛い彼女に何か買ってあげようとは思わないのかい」
「自分で言うな」


 買いたいものがある…なんて言うた割には雑貨屋でも洋服屋でも買わずに眺めとる名前。そして未だに手を引かれながらついて行く俺。…そもそも、何を買うんやろか。

ファミレスで昼食をとって、また手を繋いで二人で商店街をふらつく。未だに買い物はゼロ。別に怒ってるわけでもイラついてるわけでも何でもないんやけど、ただ単純に何を買いたいのか再び疑問が浮かんだ。


「なあ名前」
「なんだい白石」
「自分、何買いたいん?」


へへっ、と笑って鼻をかく名前。これは俺しか知らん、バツが悪い時にする癖。ふと名前の歩調がゆっくりになった。



「不審に思ったかい」
「どこ寄っても何も買わんやろ?」
「うん、確かに買いたいものなんて決まってなかったよ。それより知ってる?白石」


名前が俺の手を離して背伸びをする。そのまま、俺の耳元で楽しそうに囁いた。



白石かっこいいからさ、白石と歩いてたら、すれ違う人がみーんな振り向くんだよ?
特に女の子の反応が可笑しくって!
「私の彼氏だぞ」って、手繋いで自慢したくなったんだ。

 
  
それはそれは楽しそうに笑うから。
俺もつられて笑ってしまった。




「そんな事なら早う言えや。
こやって恋人繋ぎしたるわ。」
「ほう、大胆だね」






END.

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デートしてぇ…



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