※ヒロインは娘です。
「ねぇママ、いっしょににかいいこう!」
二階。
今家族3人で訪れたデパートの二階と言えば、そして名前が知ってる場所と言えば一つしかない。
「だぁめ。ママご飯のお買い物しなきゃ。
それにオモチャはおうちにあるでしょう?」
オモチャ売り場や。
いつもはもう少しだだをこねて粘るのだが、今日の名前は困った様にうつ向いた後、「みてくるだけ…!」と言って駆け出す。
店では走ったらアカンって言ってるのに…。まぁ、小さいデパートやから迷子にはならんやろ。
「すっかり二階に行けば何か買ってくれるって覚えてしもたなぁ」
妻に語りかければ、妻は困った様に笑う。
娘ももう来年から小学生。色々覚えてきてそれはもう大変や。
「お?白石やんか。」
「おぉ、謙也」
小さい子供を抱いて近寄ってきたのは謙也だった。
謙也の子供もうちの子と同い年。謙也に引っ付いて離れん人見知りと、うちの元気真っ盛りな娘とはえらい違って見える。
「なんや、白石も娘と絵見に来たんか?名前ちゃん居らんようやけど…」
「絵?」
展覧会でもやっているのだろうか?
「なんや、お便り見とらんの?今日から二回で幼稚園で描いた絵飾っとるんやで。俺ん所は今見てきたとこやで」
な?と謙也が娘に問いかけると、うなずく。
なんや、そんなん聞いてへんかった。名前はそれ見に行ったんか…。
「それやったら今見に走って行ったわ」
「お、噂をすれば戻ってきたで」
走って二階から降りてくるなり、母に抱きつく名前。
「名前ちゃん。名前ちゃんの絵もあったで!上手やな!」
「絵見に行ってたんやな」
「みてない」
ん?
もしかして、一緒に見に行かんくて…拗ねてしもたか…?
悪いことしてしもたなぁ…。てっきりオモチャ目当てかと思っとったから…。
「よしゃ。まだ見とらんのやったらパパと見に行こ。な?」
そう言って名前の前にしゃがんで手を差しのべる。
せやな。こうして一緒に手繋いで一緒に見に行くんがパーフェクトな家族やんな。
「やだ」
「え」
あっさり断られた。
あまつさえ、顔まで背けられた…!!
気持ちはわかるけど、断ったのはママやんか…!
それなのにママに思いっきり抱きついて離れんし…これは傷つく…!!!
「ぁー…名前ちゃん。ママと一緒に行きたいんか?」
「……うん」
「そっか、ごめんね。じゃあママと行こっか!」
ママにそう言われて、嬉しそうに妻の手を握る名前。
こうして娘は、確実に父離れをしていくのだ。
これが成長
「ホンマ…ショックや…」
「諦めや。いつか通る道やで」
END.
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