教科書に落書きするだけで迎えた放課後、俺は男子テニス部の部室前にどっかり座り込んでやった。部室内におったユウジが窓越しに怪訝な目を向けてじろじろ睨んできおったけど、気にしない。だって今は俺名前やし。
暫く部室前にいると、キャッキャとはしゃぐような声と足音が二つ聞こえてきた。その声に素早く立ち上がって駆け寄ると、案の定白石と白石に腕を絡めて上目遣いをする俺の姿があった。余りにもショッキングなシチュエーションに目頭が熱くなる。


「あれ、自分さっき教室前で会うた…」
「なーに腕組んどんねん!!」
「キャー!いったぁい!」
「キャーちゃうわボケ!離れんかい!」


まさか教室から腕組んで来たんかコイツ!もう最悪や!明日から「第二のラブルス」とか言ってあられもない噂を立てられるんや!!


「ちょ、白石スマン!部活前やけどコイツ借りるわ!」
「お、おん。ええけど…」
「ちょ、止めてよ!ちゃんと白石くんって呼んで!私そんな口悪くないもん!」
「やかましいわ!お前怒るポイント斜め上やで!」


そのまま名前を引っ張ってコート裏まで連れ出す。途中、財前と擦れ違い様に二度見された。


「ね、謙也くん。今の財前くんだよね?うわーあんな近くで見ちゃったよ!顔ちっちゃ!肌ツルツル!」
「…そんな事より、お前も夢見たんか」
「夢?ああ、髭のおじさんの夢?あれやっぱ神様なのかな?」
「やっぱりあのオッチャンのせいなんやろか…どんなファンタジーやねん…」
「でも一日限定って言われたよ」
「え、ホンマ?」
「うん。今夜はユキちゃんの店に遊びに行くからって」
「ただのスケベジジイやないか」


にしても一刻も早く自分の身体に戻りたい。燃費悪いしコイツは俺の身体で好き勝手やるし…


「…お前、まさか俺の身体で他にもおかしい事してへんやろな」
「まっさかー!でも、敢えて言うなら体育の着替えの時間が至福だったくらいかな」
「どや顔やめや」
「でさ、なんで白石くんってあんなにいい匂いするの?思わず一日中嗅いでいたくなるよね。いや嗅いだけどさ」
「…」


神様に頼みたい。さやかちゃんもユキちゃんも一緒でいいから早く現れて俺を解放してくれ。







END.

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「謙也、もしかして昨日の子と付き合うとるん?」
「…!?んな訳ないやろ」
「さよか」
「…どないしたん?」
「ん?可愛ええなぁーって」
「!?」



本日のお料理
「オチのぶつ切り甘辛煮」



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テーマ「人外ファンタジー」
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