面倒臭い。超面倒臭い。
氷帝学園の3年に進学して直ぐに、習字で年間目標を書いて提出とか、面倒臭い以外の何物でもない。

面倒臭いから適当に「飛翔」と書いて提出した。何か決めた事に対して羽ばたくとか、文化祭のテーマかよとか自分で思ったけど面倒臭さで死にそうになったから出した。理由なんてそんなモンなのに。


「なあなあ!お前だろ、あの飛翔って書いたの!」


向日くんにやたらと懐かれた。ぶっちゃけもっと面倒臭くなった。





















確かに年間目標だからどこかに貼るのかと思ったんだよ。でも氷帝学園の教室にさ、全員分貼るってどうなの。雰囲気合ってないし、もう夏なんだから剥がせばいいのに。

ちょっと大きく書きすぎた「飛翔」も勿論飾られている。
2年の弟に見せたら「文化祭みたいだね」と言われた。流石姉弟。考えている事は一緒である。


「なあなあ鳳」


ああ、忘れてた。向日岳人くんは、よくよく聞けば長太郎…私の弟の所属するテニス部の部員らしい。弟は「先輩のムーンサルトなんとかは凄い」とかって言って褒めていたけど、運動音痴の私に言われても意味不明だったし、何より面倒臭いから考えるのを止めた。


「ごめん聞いてなかった」
「もー、ちゃんと聞けよな」


彼は私の飛翔のどこが気に入ったんだろう。思えば、あの年間目標を掲げた日にいきなり話しかけてきてメールアドレスを交換して、それから毎日のようにひっきりなしにメールが来る。


「だから、昨日メールで言ってたマネージャーの話」
「面倒臭いから嫌だ」


メール不精の私だが、返信しなかったらしなかったで次の日ウルウルと目を潤ませて「返事くれよぉ〜!」と泣きついてくるので、面倒ながらも最近はちゃんと返事を送っていた。小動物を虐めている気分になったから。
お前は私の彼氏か何かか?


「ケチケチ!どうせ暇なんだろ!」
「暇じゃないよ。忙しいよ」


そうだよ、私は家に帰ってからの暇つぶしで忙しいんだ。
昨日なんてクロスワールドのマスを塗りつぶして「氷帝」と書くゲームが意外と楽しくて一人で白熱した。


「姉さん、今日財布忘れてったでしょ」
「おーサンキュー」
「長太郎!お前も名前を説得してくれよー!」


教室まで財布を持って来てくれた長太郎に頼み込む向日くん。おい止めろよ。長太郎と口喧嘩して勝てた事ないんだぞ私。


「姉さんをマネージャーに?」
「そうそう。跡部も賛成してるんだ」


誰だ跡部って。…ああ、あの泣きボクロの人か。っていうか着々と話を聞かせるな。長太郎も真面目に聞くな。


「いいじゃないか姉さん、マネージャーやりなよ」
「嫌だ」
「暇でしょ、家にいても」
「忙しいよ私!だって受験生だし!」
「だって行くの私立でしょ?」


え、何これ。まさか長太郎、結構本気で私をマネージャーに…?


「姉さん、昨日暇だって言ってクロスワードで遊んでたよね?
しかも解いてたんじゃなくて絵描いて遊んでたし」



あ、痛いとこ突かれた。
もう向日くんの中で私暇人決定じゃん。


ぐぅの音も出なくなったところで、長太郎は爽やかな笑顔で去っていった。
私の背後にはキラキラと目を光らせる向日くん。


「私、何も出来ることないよ?しかもテニスのルールも知らないし」
「今から覚えればいいんだよ!」
「むしろ向日くんが私を必死にスカウトする意味が分からないんだけど」
「え、だってお前アレ」

向日くんが指差したのは、私の年間目標。


「アレが何?」
「飛翔が目標なら、俺が誰よりも高く飛んでお前を全国に連れてってやるよ!」










ああもう面倒臭いことになった。





END.

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「アアン?お前が名前か」
(何この人、突っ込み入れるの面倒臭そう)


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