「凛くん凛くん」
「んー」
「部屋から出てってくれないか」
「ヤダって言ったら?」
「…はあ、勝手にしなよ」
「そりゃどーも」


幼馴染が嫌いだった。私の自傷癖を知っているくせに、他の人みたいに私を遠巻きにしない幼馴染が嫌いだった。一人にして欲しかった。昔みたいには戻れないのに。


「痛くねーらん?」
「痛いよ」
「へー」
「それ前も訊いてきたよね」
「そうだったか」


私の肩口に顎をつけて、二の腕を覗き込む幼馴染が嫌いだった。止めてなんか欲しくないのに、私以上に悲しそうな顔をして口を噤む幼馴染が嫌いだった。大嫌いだった。


「何時も訊こうとしてたんだけど」
「なんだよ」
「どうして、気持ち悪がらないの?」
「何を?」
「私のこと。こんな事してるのに」
「気持ち悪がる意味がわかんねーだろ」


私が自傷する時、何故か必ず部屋に上がり込んでいる幼馴染が嫌いだった。頼んでもいないのに、傷の手当をする幼馴染が嫌いだった。消毒液が傷に沁みて、ちりちりと痛む。


「やー、切った後に絶対泣くやっし」
「…」
「泣き虫の名前を慰めるのは、昔っからわんの役目だろ?」


優しくて守ってくれる幼馴染が好きだった。だからこそ大嫌いにならなければいけなかった。私の傍にいると大好きな幼馴染までが傷付くから、小さな刃物を掲げて震える自分を見られたくなかったから。でも幼馴染はまだ私を守り続けていた。


「凛くん」
「…ん?」
「助けて」


その日、今までにない程の涙を流して私は泣いた。













わたしは その やさしい て に あまえる。





END.

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