「だ、駄目だぁ…」


お風呂上り、パックが終わって鏡の前に立つ。明日は勇気を振り絞って誘ったユウジくんとお出掛けだからお洒落したいのに、全然コーディネートが纏まらない。
以前、ユウジくんにどんな服装が好きなのか聞いてみると、真顔で


「小春」


と言われて以来、私はユウジくんに好みを聞けなくなってしまった。


「まだ起きてるかなぁ…」


時間的にちょっと不安だったけど、他に聞けるような相手もいないし、電話を掛ける。意外にも相手は2コール程で電話に出た。


『もしもし、名前ちゃん?』
「小春ちゃん、寝てなかった?」
『大丈夫よ。どないしたの?』
「あのね、ちょっと相談なんだけど…」


小春ちゃんはお洒落だし、きっと誰よりユウジくんの好みを知っている。何より、私とユウジくんを応援してくれるいいお友達だ。


『んまぁ、ユウくんったら名前ちゃんにそんな事言ったの!?』
「え、でもユウジくんは小春ちゃんが大好きだから仕方ないなぁって…」
『そこは怒るトコやで!乙女心をなーんも分かっとらんなぁ、ユウくんは!』


ユウジくんのコーディネートの好みを聞いて貰っている内に、色んな話に広がっていく。小春ちゃんはお話も上手だなぁ、見習わないと。小春ちゃんは、明日のお出掛けにおすすめの喫茶店やお菓子屋さんを沢山教えてくれた。


『…あら、もうこんな時間やないの。つい楽しくって喋り過ぎたみたいやわ』
「ああっ!ほんとだ」
『睡眠不足はお肌の天敵やで』
「あっ、待って小春ちゃん!ユウジくんの好きなお洋服…」
『ふふっ、大丈夫やで名前ちゃん。ユウくんも考える事は一緒やから』
「?ユウジくん…?」
『自信持って、自分の好きなお洋服着てみなさい』


そう言って、小春ちゃんは電話を切った。ユウジくんも一緒って、どういう事なのかな。でも小春ちゃんが自信持ってって言ってくれたから、何だか自信沸いてきたかも。

単純な私は、お気に入りのスカートとレギンス、パーカーを引っ張り出して、そのまま寝てしまった。念のため、目覚ましを集合時間の3時間前にセットして。






「お、おはよう、ユウジくん」
「…おん、おはよ」


我ながらぎこちない挨拶。ユウジくんは私服もお洒落で、とてもかっこいい。朝必死に巻いた髪も、慣れないメイクも、自分の服も急に「変かも」という不安が過ぎっていった。いけない…昨日小春ちゃんが応援してくれたのに…


「あの、待ってた?」
「いや。それより」
「?」
「…そういう服装、似合うな」
「!」
「い、行こか。まず何処行くん?」











「勢いで手ぇ繋いでしもた」ってユウくんが報告して来たのよ、と小春ちゃんからメールが入るまで30分








END.

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