北の国から参りました、名前は名前と申します。
生まれも育ちも根っからの道産子な私が、今苦悩しているのが私の引っ越し先である沖縄の暑さ。
「うっわぁぁぁ!!なまらあちぃ!!」
全力で叫びながらさとうきび畑を疾走する。青い海がきらきら光ってまるで私の汗みたい!吹き付ける熱風はまるで私の鼻息みたい!
駄目だ。
暑すぎて綺麗な表現が出て来ない!
お友達は沢山出来たし、心配してた沖縄独特の言葉も「?」を頭上に咲かせれば、皆優しく標準語で言い直してくれる。
それと、調理実習でクラスメイトの木手くんが作ったゴーヤチャンプルが美味し過ぎて感動した。また食べたいな。(その時の木手くんのどや顔が半端なかった。)
「お父さんも、こんな町外れに家買うとか…はんかくさいんでないの」
疾走し疲れた私は、とぼとぼ歩みを進める。汗が目の上を伝う。あああああシャワー浴びたい…!!蝉の声が青空に響いて、正に夏真っ盛りである。しかし1年の半分が雪に覆われている土地にいた私が、こんな3月に海に入れる土地に慣れるのは大分先になりそうだよ。北海道の友達、冬に雪送ってくんねーべか。
「でーじちゅらさんや」
「え」
それでかき氷作りてー!と考えていた私は、さとうきび畑から聞こえた声に思わず立ち止まる。左を振り向くと、さとうきび畑から人の顔が生えていた。
う、うわああああああ妖精出た!!!さとうきびの妖精出た!!!!
ま、前髪白い!!!!
「やー、比嘉中に転校してきのみぐさーだばぁ?」
妖精語だ!!!これ妖精語だよ!!!!
「あ、えっと…!?」
「わっさん、うちなーぐち分からねーらんか。…比嘉中に転校してきただろ?」
あれ、よく見たら妖精さんの服、嘉って書いてある。しかも通学用の鞄持ってる。おまけに今日本語喋った。
「わん、知念寛。名前は?」
「ち、知念くん、っていうんだ。私は名前…」
「永四郎に聞いても教えてくれねーらんし、名前初めて知ったさ」
「?」
「何でもない。家こっちなのか?」
「うん」
どうやら妖精さんだと思っていた高い背の彼は、比嘉中の同学年で知念くんというらしい。さとうきび畑にいたのは、知り合いのおじさんの収穫を手伝っていたとか。
「…制服で?」
「家に戻るの面倒やっし」
成り行きで一緒に帰る事になったが彼と話すと面白い。妖精だと思って写メ撮ろうとしてごめん。ほんとごめん。と心の中で謝っておいた。
「沖縄、暑くないか?」
「すごい暑い。汗でベタベタだよ」
「…海、行くか」
「えっ、連れてってくれるの?」
「ん」
「行く!一回身近で見たかったの!」
おまけに優しい。やべっ惚れそう。テニス部の練習で使う秘密の場所があるから、と言った彼は、「いつもの場所に待ち合わせな」と付け足して別れ道を進んで行った。
…いつもの場所ってどこ?そして何時集合なの?
慌てて知念くんを追いかける。ああ、また汗かいちゃうよ。
妖精ですって言ったら信じた。
「まままま待って知念くんー!」
(北海道のいなぐは積極的ぐゎーやさ)
END.
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