何か冷たいものが飲みたい。
そう思い立った私は、サンダルを引っ掛けて家を飛び出した。思い立ったが吉日。面倒臭いって考える事が面倒臭い私は、即行動だ。


「あれ、こーちゃん。どうしたの」
「名前こそ、こんな時間にどこ行くの?」


家から出て角をひとつ曲がると、幼馴染に会った。佐伯虎次郎。手提げ鞄を持ったこーちゃんは、私を見て心底びっくりしたような顔をしている。


「女の子が一人でこんな暗い道を歩いちゃ駄目じゃないか、携帯は?」
「家」
「はぁ…、いつも持てって言ってるだろ?危なっかしいんだから」


こーちゃんはいつもお母さんみたいな事を言う。ガミガミ言うこーちゃんの言葉をぽーっと訊いていたら、急にくるっと背を向けた。


「こーちゃん、どうしたの?」
「どうせいつものコンビニに行くつもりだったんだろ?荷物持ちするから行こう」


こーちゃんは優しい。ありがと、と一言呟くと、「うん」と言って自分の上着を私に貸してくれた。
そこで、自分がタンクトップで家を出た事に気付く。

コンビニに入ると、やる気のない男の店員さんが「っしゃっせー」と挨拶をする。こーちゃんは何時もその店員さんのマネをするから、私は必ず笑ってしまう。



「…ジュースだけ?」
「うん。サイダー飲みたくなったんだよねぇ」


こーちゃんの手には一本のお茶。私はぐびぐびとサイダーで喉を潤す。ああー、甘くて美味しい。


「本当に、名前は猪突猛進だなぁ」
「まぁねー」
「昔っから苦労をかけられるよ」
「お世話になってまーす」


さっきこーちゃんと会った角まで戻ってくる頃には、既にサイダーはペットボトルの4分の1くらいになっていた。


「そういえば、こーちゃんは何でここに居たの?」
「え?」
「私とここで会ったでしょ」
「ああ、名前の家に行こうと思ってたから」
「家に?」
「うん」
「幼馴染って、思考回路も似るんだね」



こーちゃんが自分の手提げ鞄をまさぐる。そこにはちょっと温くなったサイダーが2本入っていた。













君はそう言って綺麗に笑う。





END.

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