「侑士さまぁー!朝ですよ!」
「ん…あと5分……」
「5分ですね、畏まりました。
タイム測定機能発動。体内時計タイムラグ0,006秒自動修正完了。
測定時間設定5分。測定開始。






♪〜♪〜



測定完了。機能スリープモード切替。体内充電残り99,9998%。
侑士さま、5分経過致しました」
「……この歌…」
「はいっ!私の作詞作曲した
【スキスキ☆侑士さま〜見つけて迷子のマイ中核エネルギー源〜】です!」
「…リミックスしたんやな」
「な、なんと、そこまでお気づきですか!流石侑士さま!」


























 
「侑士さま、朝食です。」
「おおきに」


世の中は進んどる。最近は月に旅行に行っただの携帯型水洗トイレの最新版がコンパクトだのと、この国は大いに盛り上がっとった。
特に発達したのが電子頭脳を持ち合わせたロボット工学で、今や家庭に一台…いや、この単位はうちのメイドさんに怒られてまうんや。一人の専業ロボットがほぼ当たり前の時代になった。

うちのメイドさんは親父が買うて来た最新型で、品番が確か…
『HG589824-1000X4』…ああ、ややこしいわ。まだ続くねん。
何となく俺や家族は【名前】と名前を付けて呼んでいる。感情ある分、名前で親しみやすく呼んだらな悲しいんちゃうか、という俺の判断や。


「本日は、侑士さまのお部屋のお片付けをさせて頂きます。」
「ゲ…すまん、今日は堪忍」
「エロ本でも隠していらっしゃるんですか?ご心配なく!全巻まとめて、誰にも見付からない私にしか分からない場所に隠し直しますので!」
「それ俺も分からんやろ」


いやそもそもエロ本ちゃうしな。



その日俺が部活から帰って来ると、名前は台所で夕飯準備をしとった。
オカンは名前にちょっとずつ料理を教えていって、今はオカンが仕事でおらん日は名前が何でも作ってくれる。


「侑士さま、お帰りなさい!」
「ただいま」
「お風呂が沸いていますよ。まだ夕飯のカレーが出来上がるまで31分掛かりますので、シャワーを浴びていらして下さい。」
「いや、手伝うわ」
「いえ…私の仕事ですので、侑士さまのお手を煩わせる訳には…」
「二人でやった方が早いやろ?」


困ったような顔をしていた名前だったが、カリカリと機械が何かを読み込むような音が止むとにっこり笑った。


「有難う御座います。では一緒に準備をしましょう」
「おん。あ、せや」
「…?侑士さま、これは…」
「今日、部屋に入ったらアカンて言うた理由や」


そんなに高くも無いネックレスやけど、先日名前に似合う思って買うて来た。机の上に出しっ放しやったそれを、名前に手渡す。
手の平のネックレスを見つめる名前からはキュイ、とピントを合わせるような音がやたらと大きく響いた。


「今日で丁度一年やろ。うちに来て」
「はい、」
「これからも宜しゅうな」


ぽんぽんと頭を撫でてやれば、名前は小さく「心音機能上昇。ウイルスチェック、プログラムチェック開始。」と呟いて、暫く俯いたままやった。










END.

**********************

10,000HIT記念!
 


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -