私は美術の時間が大好き。絵を描くのが好きなのもあるけど、美術室の班分けが幸村くんの隣の席だから。大好きな幸村くんの隣にいれるだけで私は幸せ。ああ、今日もいい匂いだな、幸村くん。何のシャンプー使ってるんだろう。

それこそ絵画の中から出て来たように美しい幸村くんは、絵もとっても上手かった。大分前だけど、スケッチブックを覗き込んで「上手いね」とポロッと溢した事がある。幸村君は


「ありがとう」


と私には勿体無い笑顔をくれた。穢れの無い微笑みに危うく浄化されそうになったよ。すっごいカッコいい。思えばあの時に惚れたんだな。

そして、今日は人物画の課題。班の中で組を作ってお互いを描き合うらしい。
私はと言えば…


「38.6度ね」
「先生、私行ける。幸村くん描く。お願い行かせて」
「駄目。迎えが来るまで寝てなさい」


熱出して保健室にいます。


おいおい嘘だと言ってくれ。悔しくて悔しくて、私は保健室の枕を涙で濡らした。ついでに鼻水も塗りたくってやる。「大丈夫?」と私の鞄を持ってきてくれた友人に「私と代わってくれ」と言って「嫌だ」と一蹴されても諦めきれない。
もう美術の授業が終わる時間だ。でもやっぱり諦めきれない。幸村くんの隣に居れる唯一の授業なのに。お母さん迎えに来ないし。鼻が詰まって辛いし、私は世界の全てを呪う。主に風邪菌を呪う。

授業終了のチャイムが鳴って、保健室の前を生徒が行ったり来たりしているせいか、少しだけ騒がしい。暇なので走ってるやつに各授業で先生に必ず指される呪いをかけていると、保健室の扉が開いた。


「あら、どうしたの?」
「名前さんはいますか?」
「ええ、そこに」


先生の声と、……幸村くんの声?
いやいや、遂に耳までおかしくなったのか私は。どれ、走っている奴に呪いをかける仕事に戻るとするかなと寝返りを打った時だった。仕切っていたカーテンを開けてこちらを覗き込んで来たのは


「名前さん、大丈夫?」


な…っ!?


「ゆゆ…幸村くん…!」
「熱があるんだって?」


幻影じゃないよね?そこまで頭おかしくなってないよね、私。
あ、いつもの幸村くんのいい匂いがする。くんくんいつ嗅いでも堪りませんなじゃなくて。


「ど、どどどうしたの…?」
「名前さんに伝える事があったんだ」


幸村くんが少し屈んで私に耳打ちをする。近いよ近いよTI★KA★I★YO!!!!!ヒイヒイ一言っていないか汗タップリな私を余所に、幸村くんはいつものトーンで話し出した。


「美術の課題、俺と名前さんがペアになったよ。今日出来なかったから、名前さんが治り次第二人で居残りだってさ」


宜しくね、と笑う幸村くんを見ながら、私は美術の先生を盛大に奉ろうと心に誓った。






「俺、好きだな」
「…!? え…?」
「名前さんの描く絵。凄く綺麗じゃないか」
「あ、ああ…ありがとう…」




END.

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