逢魔ヶ恋
「あれ・・・・!」
ただいまの時間は夜の9時前
もう外は真っ暗で月や星が良く見えるくらいの夜中である
そんな夜中にプリサイス博物館
(まぁ、私が用事があったのは図書館だけなんだけど)
を訪れると、たくさんの本棚に囲まれた部屋の真ん中に置かれた
机の上にたくさんの本と一緒に見慣れた影があった
普段はこんな時間に図書館には来ない
今日はたまたま返すのを忘れていた本が
たまたま今日が返却日だったため
急いでさっき図書館に来た次第である
(クルーク・・・・?じゃ、ないな・・・・)
たしか怪しいクルーク?だっけ?
その見慣れた影の持ち主は
どうやら見慣れていたのは身体だけだったみたいで
現在の中身は別人みたいだった
なんか服装も赤いし。
(えーと・・・・なんだっけ?封印されてた魔物なんだっけ?)
2、3度会った程度の彼の記憶をひっぱり出す
まぁこれといった記憶はないんだけどね
机に伏すようにして寝ている彼は
たくさんの本がまわりに詰まれていて
なんか少し動いただけでも本の山が崩れてしまいそうだ
魔物なのに勉強してるのか?
いやー、関心!関心!←
ひょこひょこと彼の前を通りすぎて
本棚に本を返して、無事私の果たすべき任務は終了だ
さぁ帰ろうと思ったが
未だ私の存在に気づかず、寝たままの彼が気になった
てか、こんなとこで寝たら風邪引くんじゃね?
よく寝てるとこ悪いのだが、起こそうかと考えた
・・・・・が、あまりにぐっすりと寝ているので起こすに起こせない
どうしたもんか
・・・・っていうか、きれーな顔してるなぁ
クルークの時はそうも思ったことないけど
なんか見た目もちょっと違う感じだし
中身が違うだけでこんなに違う人に見えるんだなー・・・
いやー・・・それにしても顔きれーだ←
わー、まつ毛も長いな
その辺の女子よりきれーな顔してんじゃないの?
少なくとも私よりは←
特にやることもない私は
じーっとクルークもどきさん(?)の顔を観察した
・・・・・なんか、こういうきれーな物って
こう・・・、ちょっと悪戯したくなっちゃうのって私だけ?←
必要かなーと思って出かける前に掴んできた
いつもの学校用の鞄をじっと見て
中をごそごそとあさった(いや、まぁ自分の鞄だけど)
そしてサインペンを取り出し、
しばらくペンとクルークもどきさんの顔を見比べた後
きゅぽんっとサインペンを引き抜いた
(まぁこれ、水性だし。起きる前にちょいちょいっと拭いて帰ろう。バレへんバレへん・・・・)
まぁまずはちょびヒゲだよな・・・!
んでほっぺにぐるぐる描いてー・・・・
額に第三の目を開こうではないかふはは!←
きゅきゅきゅのきゅっと鼻歌を歌いそうな勢いで描きあげた
「・・・・・・・ブッッ!!ww」
なんか、かわいいんですけど・・・!!
そうかそうか、イケメンは落書きしても不細工にならんのか・・・!
いやー、いい勉強になったなー!ははは!←
「よし、消そう・・・」
ハンカチを鞄から出そうと身体の向きを変えた
すると机から何かが伸びて
私の右腕をガシッと力強く掴んだ
「・・・・・・おい、キサマ」
その伸びたものはどうやらクルークもどきさんの腕だったらしく
伸ばした本人はゆらりと身体を起こした
寝ている間に顔に落書きされたことで
やっぱり機嫌は良いわけなくて
そんなただじゃ済まない雰囲気に
私は全身が冷たくなるのを感じた
「・・・・・何をしている」
「あ、あの・・・・・その・・・・;;;」
不機嫌なオーラを出しながら
ゆらりと起き上がったクルークもどきさんは
私を見ると睨んでいた目を見開いて驚いた
「お前は・・・・!」
「は・・・・?;;;」
「あの時の女か・・・」
あの時?;;
っていうかとりあえず
お顔拭きませんか・・・・ッ!;;←
*
すっかり顔が元のイケメンに戻ったクルークもどきさんに
隙を見てこっそり図書館を出ようとした私は何故か捕まっている
何故だ
とりあえず全力で謝って
ハンカチを寄付し(拭こうとしたら『自分で拭く』と言われた)
そんでクルークもどきさんも『気にしていない』と言ってくれたはずだ
んで元々面識もなかった私らはこれでバイビー☆って
なる予定だったはずなのだ・・・!
少なくとも私の中では・・・!←
「なぜ逃げる」
「いや、あの・・・逃げるんじゃなくて帰ろうとしたんですけど・・・・」
腕を掴まれて今度は壁側に押し込まれてしまった
これは・・・逃げられん・・・・←
何事もなかったようにサヨナラーってするはずだったのに・・・
どうしてこうなった・・・!!
ああ、イケメンごしに見る図書館の中が新鮮だ(ぇ
「・・・お前、名はなんという?」
「クルークから聞いてないんですか・・・?まぁ興味を持つ程面識無かったですよね。
なまえっていいます。あとお顔が近いです。」
「いや、お前はプリンプの者ではないと思っていた。
なまえか・・・、良い名だ」
「そりゃどうも。ところで私に何か用ですか?あとお顔が近いです」
「別に用は無い」
「そうですか。じゃあ夜も遅いので帰りたいんですけど。あとお顔が近いです」
「共に住んでいる者がいるのか?」
「いいえ、一人暮らしですけど。明日の支度とかしたいんで。あとお顔が近いです」
オイ。顔が近いのはスルーか。
まぁイケメンだから目に毒ではないけども
クルークもどきさんからしたら目に毒なんじゃないのか?←
そんなラフィーナとかアルルみたいに特別きれーとかカワイイ顔はしてないぞ?
しかしイケメンだなコノヤロー
さっきから二人共表情が変わらないので
何が楽しいんだともう一人私が居たならそう突っ込んでいるところである
「なまえ、いつだったか私に言った言葉を覚えていないのか?」
「は?」
そんな珍しいこと言ったか?
いや、毎日本能で生きてるからいちいち覚えてないけどさ
「えーと、私何か変わったこと言いました?」
「お前は私に『恐くない』と言ったのだ」
「はぁ・・・」
「あまりに強大な力を手にし、封印されていた魔物である私に『普通の人と変わらない、普通に考えて恐くない』と言ったのだ」
・・・・・・そんなこと言ったっけ?←
私的には普通に思ったからぽろっと口に漏らしただけだったんだろうけど
少なくともこの人にとっては印象に残るような
めずらしい発言だったのだろう
しかし見事な程記憶がない。さっぱりである←
「・・・どうだ」
「ん?」
「今も恐くないのか?他人に押さえ込まれているのだぞ?」
「いや別に。確かにお顔は近いですけども」
イケメンだから精神的攻撃力もないしな!←
てか強大な力とか言ってっけど
一回皆で封印できたし、この人が暴れたらまた皆で封印しちゃえばいいしね
何が恐いねん←
イマイチ良く分からん、と考えていると
クルークもどきさんはフッと少し笑った
「そうか・・・・・」
・・・・・・わぁ
・・・・今日一番のイケメン、かも
あまりにキレイに笑うので
私はちょっとクルークもどきさんに見とれちゃってた、かもしんない
すぐにさっきと同じ普通のイケメンになったクルークもどきさんは
やっとこさ目の前からどいてくれた
「なまえはよく本を借りにくるのか?」
「は・・・、ああ。うん。こんな夜中に返しに来たのは初めてだけど」
「では今度から夜に図書館に来い」
「・・・・・Σは!?何で!?」
「来なきゃお前の家まで行く」
「Σもっと何で!!?;;」
「なまえが気に入った」
「はぁ・・・・?」
それっきり、私は図書館で本を借りなくなった
ただ日が暮れてから
図書館で読書する時間が増えた
不思議と悪い気はしていない
何故だ。
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ジキル様より、あやクルのギャグ甘夢を頂きました!
顔が近いことは無視するあや様に吹いてしまいましたw
くっそ!あや様と一緒に本読みてえ!←
そしておまけも頂いてしまいました…!ふぉぉ…!
私もう嬉しすぎてアセンションしたい気分です\(^o^)/(おま
あ、おまけの方はイラストの方に載せてあります!
それではジキル様、素敵な文と絵ありがとうございました>//<