「嫌な気持ちにさせたらすみません」 「うん?」 「この傷はいつのですか」 ベッドの中で、恵は心から申し訳なさそうにしながら聞いてきた。何度か裸にされているのに聞かれなかったから、逆にわたしのほうが忘れてしまっていた。 お腹の傷。日に当たらないそこは白いから、いくらか薄くなってくれたとはいえ、傷は目立った。わたし自身昔からこれと一緒にいるし、消す予定もなかったから当たり前だと思っていたが、恵はそうじゃないのだ。手をとって、指を出させて、そこをつつ、となぞらせる。 「手術のあと。もう十年以上前かな」 「……痛いですか?」 「全然。なに、気つかってくれたの?」 「……ハイって言うのは変ですけど、ハイ」 もったいないほどのできた彼氏だなあと思うと抱きしめたくなってしまって、首に腕をかけた。重い体が乗ってきて、わたしの胸が恵の胸でつぶれてしまう。 「ありがとう。恵のそういうとこが好きだよ、痛くないからいっぱい触ってほしい」 ほっぺを両手で挟んでキスをした。離れると、暗がりのなかでも恵の顔が真っ赤なのが分かってしまった。かわいいやつ。 |