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「助かったぁ。わたし方向音痴だから、伏黒をおんぶはできても帳から出られるかあやしくて。そうじゃなくても山道なのに」

 ワン!

「寝てても呪力が尽きてなかったら式神は出たまんまでいられるんだね。くわしいことは知らんけど、良かったよ。よろしく」

 ワン、ワン!

「元気だねえ」

 話し声で目が覚めるが、伏黒は最後まで寝たふりをすることに決めていた。好きな人が、自分の式神となにを話すのか興味があったからだ。ちなみに、玉犬は二匹とも伏黒が起きていることに気づいている。幼い頃からの仲だ、声に出さなくてもそれなりの意思疎通はできる。伏黒をチラリと見るようすもない。
 好きな人におんぶされて運んでもらっている事実については、嬉しいような、そうじゃないような、そんな気持ちだった。

「てかわたしも呪力尽きてなくて良かった。さすがに強化しないと伏黒は背負えないわ」

 ウウ。

「ふたりとも力はあるけど背負ったりはできないでしょ? 鵺なら飛べるかな。でもまあ、引きずるのはわるいから。かなり助けてもらったし」

 ワン。

「やさしいねえ、強いねえ。主人がやさしくて強いからみんなもそうなのかな。いつもありがとうね。……あっ、見えてきた……? あー、ここ登ってきたところだ。この木の側のでっかい草見覚えある。あー伊地知さんだあ! 伊地知さーん! 良かった〜、まず伏黒乗せてあげないと」

 ワンワン!

「術式を解かないと戻らないんだっけ? どうしようねえ。狗巻みたいに“戻って”って言ったら戻れる? 戻って〜」

 伏黒は一人でたまらない気持ちになっている。そろそろ起きようとわざとらしい演技をしたら、「あ、伏黒おはよう」と微笑まれて、苦しくなった。