「なまえのこと好きなのか?」 真希の言葉に恵は飲んでいた水を吹き出し、真希は「汚ねえなあ」と言いながらヒョイと避けた。話題に出てきたなまえは、少し離れたところで、棘とパンダと三人で花壇に水を撒いている。 「オマエもっと冷静になった方がいいぞ。今の反応含めて分かりやすすぎる。憂太も気付いてる」 からかうように笑われて、恵は居心地がわるい。 真希の言うとおり、恵はなまえが好きだった。術式のわりには体術を押してくるところ、今現在実質一人きりの三年生として頑張っているところ、優しいところ、その他もろもろ……。 「かわいいもんなあ、なまえ」 「…………」 「優しいしな。私もなまえは好きだよ。棘もパンダも憂太も。あの見た目でバカ目隠しとノリが合うところがまた面白ぇよな」 「そうですね……」 「私入学してすぐの頃はなまえにボロカスに負けてたからな」 「えっ? 先輩が?」 「おう。強えのなんの」 ポカンとした表情に、真希はおかしそうにした。恵は真希が勝ったところしか見たことがなかった。吹っ飛ばされ「もう! 勝てない!」と悔しそうに地面に転がるなまえは記憶に新しい。 恵がなまえに勝ったことは、まだない。 「本当に好きなら取られないようにしとけ。なまえ、わりとモテるぞ」 ニヤニヤしながら呪具をクルクルと振り回す真希から距離をとる。そんなこと分かってますよとは言えなかった。 |