「髪が跳ねまくってるの、絶対自然乾燥のせいだと思うんだよね」 「なんです? 急に」 「高級ドライヤー買ったからこれで乾かしてあげる!」 カチ! ブォー! とコントのような勢いでなまえさんは温風を自分に当てて、変な顔を作った。 二万円以上するというドライヤーを俺に使っていいのかと思いながら乾かしてもらう。わざわざ機械を使って乾かしたことが今までにあっただろうかと考える。床屋に行ったときしか思い出せない。タオルで拭けばそこそこ乾くし、風呂を上がってそのままベッドに、ということはあまりやったことはない。 カチ、とまた音がして、髪を撫でつけられた。 「ちゃんと乾かしたら跳ねないね。でもなんか変な感じ」 「どっちですか」 「んーどっちかって言われたら、どっちも好き」 次の朝起きたら俺の髪の毛はいつもみたいに跳ねていて、なまえさんは一人で「どんな芸術! もう知らん!」と叫んでいた。それ以降ドライヤーはやってもらえなかった。 |